フランスにおけるカキの大量斃死と三陸産種ガキのフランスへの輸出を契機とした,水産学分野における日仏交流

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  • Exchanges between Japan and France in the field of fisheries science, triggered by the mass oyster die-off in France and the export of Sanriku oyster seeds to France

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抄録

1960 年に日仏海洋学会(SFJO)が設立され,フランスとの海洋学に関する協力が始まった。1960 年代後半, フランスで養殖されていたカキが病気で大量に死亡し,カキ養殖の存続が危ぶまれる事態になった。そこでフラ ンスの研究者は,SFJO 会員である東北大学の今井丈夫教授に,病気に強い三陸カキをフランスに輸出できない か打診した。今井教授を中心とする研究チームは,検疫や病理検査を行い,三陸産のシングルシードのカキ1 万 トンをフランスに輸出することに成功した。この輸出により,フランスのカキ養殖業は危機を脱した。その後,日仏協力は水産学にも及び,1984 年に仏日海洋学会が設立された。2011 年3 月11 日,三陸沖で大津波が発生し, 養殖施設が壊滅的な被害を受けた。その直後,仏日海洋学会,フランスの牡蠣養殖業者,その他のフランスの団 体から,三陸のカキ養殖業者によるカキ稚貝提供のお礼として,彼らを支援したいと日仏海洋学会に連絡があっ た。これらの団体と日仏海洋学会は,三陸の県水産試験場や県漁協に顕微鏡やプランクトンネットなど,カキの 種苗採集に不可欠な機材を寄贈した。本稿では,このような水産科学に関する日仏の交流について概説する。

収録刊行物

  • La mer

    La mer 61 (3-4), 107-127, 2024-03-27

    日仏海洋学会

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