中国における地級行政区画の年代別境界データの作成
書誌事項
- タイトル別名
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- Creation of chronological boundary data for Prefecture-level administrative divisions of China
説明
<p>Ⅰ はじめに</p><p>中国の行政区分は,上位から省級,地級,県級,郷級のピラミッド構造を持つ。都市の発展状況を把握するにあたって,重要となる地級行政区画の境界データは,中国国家基礎地理情報センター(NGCC,中国語:国家基礎地理信息中心)において公開されていた。しかし,2010年代後半に公式サイトのリニューアルに伴い,新しく公開されたデータは,地級より下位の行政区画である県級が主体となっており,地級行政区画の境界データは,公開されていない上に,過去の年代に遡ることもできない。つまり,公式に公開されているデータでは,中国の地級行政区の歴史的変遷を追う事ができないのである。こうした状況に鑑みて,本研究では,地級行政区画の境界データの作成を目的として,適切な年代別境界データの作成方法を模索する。</p><p>Ⅱ 資料および方法</p><p> 境界データの作成にあたっては,まずNGCCにおいて公開されている「1:100万公衆版基礎地理情報データベース」を基礎資料として用いた。行政区画の変遷を辿るために,中国民政部「全国行政区画情報検索サービス」と「全国行政区画コードリスト」を用いている。また,データの確認作業の段階において,中国国家地球系統科学データセンター(NESSDC)および中国科学院地理科学資源研究所・資源環境科学データセンター(RESDC)の地級・県級データを参照した。</p><p> 作成手順は,第1図に示した通りである。NGCCの元データの前処理を行なって,まず「2019年版県級行政区画の境界データ」を得る。次に,民政部で公開される資料を整理し,県級行政区の所属関係や境界の変容を反映させた上で,2019年の前年度または次年度地級境界データを作成する。そして,NESSDCやRESDCにある同年のデータと比較して校正を行う。上述の操作手順を繰り返し,目標年の地級行政区画の境界データを作成する。</p><p>Ⅲ おわりに</p><p> 本研究においては,中国の年代別地級行政区画の境界データの作成について検討した。現時点において,2010年・2020年の境界データを作成することができた。2010年以降の行政区画の変更は,中国の都市化の過程を反映しており,とりわけ2014年以降,県級行政区を合併し,地級行政区に編成されることが多くなっている。その要因として,都市と農村の一体化を進める「新型城鎮化和城郷融合」政策の影響が示唆される。この成果により,境界データと政府や研究機関が公開する統計データとの結合が可能となった。このような研究の基盤となる境界データの整備は,中国関連研究の進展に貢献すると考えられる。今後は,2000年代以前の境界データの作成に取り組む予定である。ただし,2000年代以前は,参照できる資料が限られており,2020年代と同等程度のデータ精度を維持できない可能性がある点に留意する必要がある。同年代の紙地図のトレース等の方法を用いる事も含め,種々の方法を検討していきたい。</p>
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2024s (0), 151-, 2024
公益社団法人 日本地理学会