徳島県小松島沖,亀磯周辺の海底地形

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  • Submarine topography around Kameiso, off Komatsujima, Tokushima prefecture

抄録

<p>1.はじめに</p><p> 2010年ハイチ地震や2018年インドネシア・スラウェシ地震ではM7クラスであったが,海岸付近の比較的平坦な地盤が崩壊して海に突入したため大津波が発生した.このような現象は地震を伴わない非地震性津波に分類され,揺れが弱いために避難行動にすぐさま繋がらないため,厄介なタイプの地震である.2011年東北地方太平洋沖地震以降,様々な津波対策が日本各地で実施されているが,非地震性津波への対策は困難であり,実施されていないのが現状である.そこで我々は,徳島県沖を対象に地震による臨海部の崩壊メカニズムの解明,地盤崩壊に伴う誘発津波の予測精度向上と対策の高度化を目指している.本発表では,地震・津波により水没した伝承が残る徳島県小松島沖,亀磯周辺の海底地形計測結果を報告する.</p><p>2.調査地域</p><p> 調査地域では,「亀磯の伝承」が知られている.島田(1932)では,複数の古文書記録を採録し,亀磯の水没について議論されている.現在の亀磯は,小松島沖の小島であり,かつては西の芝山と一続きであったと言われている.そして,多くの人が居住していたが,津波により一面海と化したという伝説が存在する.このように亀磯には,地震や津波に関連した伝承があり,現在も亀磯の伝承が伝わっていることが現地の方の証言からもわかった.そこで,本研究では,亀磯の水没を検証するために亀磯とその東側の岩礁部を対象に海底地形計測を実施した.また,調査地域の地質は,西の芝山から連続する三波川変成岩類に属す泥質片岩や苦鉄質片岩からなると考えられる(牧本ほか,1995).</p><p>3.研究手法</p><p> 本報告では,2022年9月22〜25日に実施されたマルチビーム測深機(Sonic2022)を用いた海底地形計測の結果を示す.計測範囲は,亀磯とその東側の岩礁の2ヶ所(それぞれ約2 × 1 km)である.マルチビーム測深機のスワス全角120°で水深5~10 m に対してラップ率50%,水深10~20 mに対してラップ率20%の確保を目安に測深間隔を設定した.水深6〜8 m以浅に関しては,船が入れなかったため測定できていない.得られた結果は,0.2 mグリッドで出力した.得られた標高データに対して,Kaneda and Chiba (2019)の赤色立体地図作成ソフトウェアを用いて,赤色立体地図とそのステレオペア画像を作成し,地形判読を行った.</p><p>4.結果・考察</p><p> 亀磯では,基盤岩と思われる東北東―西南西に伸びる台地状の地形が連続し,水深8〜10 mに定高性が認められる.また亀磯の北西側には,南東からの流れで形成されたと考えられるマウンド状の高まりが確認される.また,計測データを見る限り,人工的な地形は認められなかった.</p><p> 亀磯の東側では,亀磯同様に東北東―西南西に伸びる地形が連続する.こちらでは,水深6〜15 mの間に何段かの平坦面が認められる.こちらも亀磯ほどではないが,北西側に南東からの流れで形成されたと考えられるマウンド状の高まりが認められる.以上のことから,計測を行った2ヶ所で津波を引き起こすような地盤崩壊の痕跡や水没したと思われる人工的な地形・構造物は認められなかった.</p><p> 一方,何段かの平坦面が認められたことから,沈降によって海面付近で形成された地形が水没した可能性がある.本地域で沈降を起こすテクトニックな現象は,南海地震と中央構造線活断層帯の地震が考えられる.1946年南海地震の際には,小松島では広範に認められる地盤の昇降はなかったようである(小向,1948).また測地記録では,水準測量でもGPS観測でもほぼ安定(檀原,1971;村上・小沢,2004)で顕著な隆起・沈降傾向を示していない.中央構造線活断層帯の地震による沈降は,中西ほか(2002)や佐藤・水野(2021)で議論されており,断層南側で継続的な沈降が認められている.しかし,本研究対象地域は断層から約15 km離れ,どの程度の沈降量となるのかは不明である.</p><p> このように現段階では,その沈降の要因を特定することはできなかったが,長期的な沈降を反映した地形である可能性があり,今後現在の海岸部の地形との比較を通して検証を行なっていく.</p><p>引用文献: 島田 1932. 徳島市郷土史論. 113-140. Kaneda and Chiba 2019. BSSA 109, 99-109. 牧本ほか,1995. 20万分の1地質図幅「徳島」, 地質調査所. 小向 1948. 水路要報,増刊号. 檀原 1971. 測地学会誌 17, 100-108. 村上・小沢 2004. 地震 第2輯 57, 209-231. 中西ほか 2002. 地学雑誌 111, 66-80. 佐藤・水野 2021. 地質調査総合センター速報No.82, 21-27.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299859706266240
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_21
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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