2010年代後半以降の熊本市中心市街地における大型店の立地再編

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  • Locational Reorganization of Large-Scale Retail Stores in the City Center of Kumamoto City since the Late 2010s

抄録

<p>Ⅰ はじめに</p><p> 地方都市における商業活動の変化を論じる場合,大型店の出店規制緩和やモータリゼーションの進展に伴う郊外の隆盛と中心市街地の衰退という視点で説明されやすい。だが,地方都市の中でも人口規模が大きな県庁所在都市クラスの中心市街地では,広域集客が可能な高次な買回品の販売を通じて,郊外との差別化がなされているところもある。こうした動きがどのような形でみられたのかについて大型店の立地を手がかりに述べることは,商業活動から中心市街地活性化の方向性を捉える上でも看過できない。</p><p> そこで本報告では,地方都市の中でも738,181人(2023年11月現在)と,九州で3番目に人口が多い熊本市の中心市街地における大型店の立地再編について2010年代後半以降の動向から示す。なお,本報告の中心市街地は,改正中活法に基づく第4期中心市街地活性化基本計画(2023年4月~2029年3月を予定)で定められた範囲とする。</p><p>Ⅱ 中心市街地における大型店の立地再編</p><p> 立地再編は2つのパターンに分けられる。1つ目は,中心商業地(桜町)とJR熊本駅前の再開発によるものである。前者は,熊本交通センター(1969年開設)と県民百貨店(1973年岩田屋伊勢丹ショッピングセンターとして開業)の建て替えに伴って2019年に開業したサクラマチクマモトがあげられる。ここには,大型店のほかマンションやホテル,ホールなどが併設されると共に,芝生と広い幅員の通路からなる広場が新たに整備された。後者はJR九州によって2021年に開業した駅ビル「アミュプラザくまもと」が該当する。アミュプラザくまもとは2011年の九州新幹線開通後,熊本駅の建て替えや在来線の高架工事など鉄道に関わる一連の整備を進める中で建てられた。 2つ目は,中心商業地の下通における大型店の建て替えである。1つは旧大洋デパート跡地で系列の百貨店を経て総合スーパーの営業を続けたダイエー撤退後の2017年に開業した「COCOSA」があげられる。もう1つは,2023年下通北口にあった熊本パルコ(1986年開業)跡に開業したHAB@熊本である。パルコは地下1階~地上2階の店舗を管理する一方,3~11階は星野リゾートが展開するホテル「OMO5」に利用されている。これらの大型店に入居するテナントの多くはファッション系の専門店である。</p><p>Ⅲ 大型店の立地再編がなされた背景</p><p> 熊本市は,2006年郊外におけるイオンモールによる大型店(店舗面積は約70,000㎡)の出店計画を却下したのをはじめ,準工業地域における大規模集客施設の立地規制をかけることで改正中活法に基づく中心市街地活性化基本計画の認証を受け続けている。このように大型店の郊外立地に規制がかかる中,中心商業地では熊本市電が走る通町筋で1952年に開業した鶴屋百貨店が建物の増床を繰り返しながら高い集客力を保っていた。他方,通町筋の周辺に当たる桜町や下通に立地する既存の大型店は建物の老朽化に加えて,百貨店や総合スーパーによる店舗運営は行き詰り,それに代わる業態による大型店の立地が求められた。また,熊本駅前はターミナルであるにも関わらず,中心商業地と競合する大型店がなかった。そこでJR九州は,九州新幹線の開通を自社所有の不動産を活用した再開発を進める好機と捉えた。そして,鉄道事業に依存しない収益を確保すべく2000年代以降,九州各県の県庁所在都市クラスの駅前で立地を続けてきたアミュプラザを熊本駅前にも建てることで,中心商業地と同様にファッション系専門店の集積による広域集客を目指したと考えられる。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299859706289024
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_25
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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