リノベーションまちづくりとジェントリフィケーション

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書誌事項

タイトル別名
  • Renovation City Planning and Gentrification
  • A Case Study of Komoro City in Ngano Prefecture
  • -長野県小諸市を事例として-

抄録

<p>中心市街地の衰退に伴い,空き家や空き店舗などの遊休不動産が増加している.このような遊休化した不動産という空間資源と潜在的な地域資源を活用して,都市・地域経営課題を複合的に解決することをリノベーションまちづくり(清水 2014)として示されてきた。そして,リノベーションまちづくりは地域再生の方策としてみなされてきたが,必ずしも地域住民の全てに受け入れられてきたわけではない.商店街の再生により地域の静寂が妨げられ,違法駐車などを快く思わない人々の存在など(池田 2019),地域に軋轢が生じることもある.このような地域に生じる軋轢を含め,中間階級の歴史的建造物の再利用により新たな商業施設が増加し,地域住民の間接的な排除が生じる状況は,緩やかなジェントリフィケーション(kahne 2018)として示されている.本研究では,長野県小諸市を対象に緩やかなジェントリフィケーションについて検討を行う.小諸市は北陸新幹線開業の1997年までは,小諸駅に東京からの特急列車が停車し,観光客などで賑わっていた.その後,北陸新幹線開業に伴い,JR信越本線が第三セクターのしなの鉄道に引き継がれ,東京からの直通電車がなくなった.その影響により小諸駅への年間乗車人員が大幅に減少し,その結果,小諸駅前や周辺の商店街の衰退に伴い,空き店舗が増加していった.このような状況下において,「おしゃれ田舎プロジェクト」により,小諸駅周辺では空き店舗や歴史的建造物を再利用した新規事業者による出店が続いた.おしゃれ田舎プロジェクトは,市役所職員や民間企業の有志が,移住者や地元の人々と一緒に“若い世代が出かけたくなるまちなか”をめざして活動を行っている団体である.点在する空き店舗などで創業する人たちを支援するために,まちなかの事業主たちとつながりを持ち,新規創業者と一緒にまちなかを盛り上げる取り組みを行っている.2019年の終わりから活動を始め,2023年9月時点で20店舗の開業を支援している.こだわりのコーヒーと各地から取り寄せた日本茶などをサイフォンで楽しめるサイフォン専門店や自家製酵母と長野県産小麦100%を使用して薪窯で焼いたパンを提供する店など、値段が少し高くても質のいいモノを求める客層に支持される店が開業した。このような変化により,古くから小諸市で商いをしていた人々が触発され,観光客に向けたサービス業や製造・販売から飲食店の経営へと新規事業を行うようになった.その結果,小諸市は市外の人々がわざわざ訪れるべき地域になった.その一方で,新規出店の店舗に対し,「町家を無理やり開けて勝手なことをしている」,「私たちが利用できない店が増えた」といった声もあがっている. 本報告では,小諸市におけるリノベーションまちづくりによる地域再生とその後に生じた緩やかなジェントリフィケーションについて検討し,地域再生のあり方について言及する.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299859706318208
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_312
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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