防災の基盤としての地域コミュニティ

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タイトル別名
  • Communities as the Basis for Disaster Mitigation
  • Differences in Community Resilience between Mixed Residential Areas and Newly Developed Residential Areas in Hiroshima City
  • 広島市の混住化地域と新興住宅地におけるコミュニティ・レジリエンスの差異

抄録

<p>1.問題の所在と研究の目的</p><p>近年,ゲリラ豪雨と呼ばれる局地的大雨や線状降水帯による集中豪雨など,発生予測困難な気象現象による都市型水害や土砂災害などが全国各地で多発している.災害発生直後,特に大規模な災害の際には,地域を詳細かつ的確に把握する地域住民自身が消防や警察よりも力を発揮することがある.例えば,阪神・淡路大震災では,市民による救助者は警察・消防・自衛隊による救助者の 3 倍以上にのぼる1).本研究の目的は,この災害時の共助,古くは互助と呼ばれる地域コミュニティの果たす役割に着目し,コミュニティ・レジリエンスがいかに地域防災に資するかを広島市の混住化地域と新興住宅地域の比較から考察することである.</p><p>2.研究対象地域と研究方法</p><p>広島県は全国のなかで最も多い47,743カ所の土砂災害警戒区域を有する(国土交通省 2023).広島市も例外ではなく,太田川をはじめとする河川の河口部を有する中区と南区を除くと,西区,東区,安佐南区,安佐北区,佐伯区,安芸区はいずれも,河川と旧河道沿いに細長く広がる自然堤防と氾濫原低地,山地斜面地,毛細血管のように筋状に広がる小河川沿いの狭小な谷底低地からなる.とりわけ,600~1000mの山地部が市域面積の約3分の2を占め,東西北の三方から平地部を取り囲む.本研究は災害復興への対応力差を考察するにあたって,戦後における市域人口の大幅な増加によって山裾の斜面地まで住宅開発が進んだ広島市のなかでも,混住化地域の安佐南区梅林地区と新興住宅地域の安芸区矢野地区を研究対象地域として選定し,この2地域における住宅開発およびコミュニティ活動について比較考察する.前者は空中写真と人口統計,後者は町内会の役員を中心とした聞き取り調査によって明らかにする.</p><p>3.研究対象地域における災害</p><p>安佐南区梅林地区は平成26(2014)年8月豪雨によって甚大な被害を受けた地域の一つである.安佐南区域においては,太田川,古川,安川,山本川の旧河道を含む河川沿いの八木,緑井,祇園,山本,長束,西原などの農業集落が江戸時代までに形成されていた.梅林でも江戸時代から続く旧家の存在が認められるものの,多くの住民は昭和40(1965)年以降の住宅開発によって流入した,いわゆる新住民である.一方,安芸区矢野地区は平成30(2018)年7月豪雨による被災地の一つである.矢野は,マツダ株式会社による従業員向け住宅地として1970年代に開発され,宅地化した新興住宅地域である.発表では,コミュニティ・レジリエンスに反映した地域差に加えて,町内会を超えた地域コミュニティの役割に重要性について言及する.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299859706331648
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_46
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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