山形県飯豊山地北東部の雪崩地形

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  • Avalanche landform in the northeastern Iide Mountains, in Yamagata

抄録

<p>山形県飯豊町最上川上流の置賜白川に建設された白川ダムの白川湖西側を通る県道4号線(主要地方道米沢飯豊線)の斜面において2023年2月1日に雪崩が発生し,約40mにわたって道路を塞ぎ通行止めとなった.空中写真判読の結果,白川湖に向かって傾斜する南北及び東西方向が約500mの地すべり地形がみられ,雪崩は稜線下方遷急線付近で発生した全層雪崩であった.</p><p> また,地すべり内には筋状地形やアバランチシュートなどの雪崩地形がみられた.上記の全層雪崩発生斜面近傍では,2015年3月4日と2021年2月13日にも全層雪崩が発生した.これらの3時期の全層雪崩は,いずれも①遷急線付近で発生,②地すべり滑落崖や筋状地形のみられる斜面で発生という共通性が認められた.これらの全層雪崩の発生や雪崩地形の存在から,周辺の地域においても同様の雪崩地形の存在が予想された.</p><p> そこで,雪崩が発生した斜面を中心に南北約6㎞,東西約4㎞の範囲を調査地区として,雪崩地形の判読を行った.調査地区は山形県南西部の朝日山地と飯豊山地に挟まれた標高が500~700mで定高性を有し,東方の米沢盆地に向かって徐々に低下する低山地ないし丘陵地である.調査地区及び飯豊山地には多数の雪崩地形が分布していた(図1).</p><p> 全層雪崩は筋状地形やアバランチシュートなどの雪崩地形の他に草地・低灌木や崩壊地においても発生することが知られている.そこで,本論では調査地区において,草地・低灌木や崩壊地の斜面についても雪崩地形と定義した.その結果,調査地区では雪崩地形が359個判読され,①筋状地形(127),②アバランチシュート(10),③草地・低灌木(209),④崩壊地(13)が認められた.調査地区における雪崩地形の傾斜は,30~45°(144斜面)と最も多く,全体として25~40°が多くを占め,新潟県で調査した雪崩地形の傾斜30~50°と類似していた.方位については北東(70),東(76),南東(63)と東寄りの斜面で顕著となった.これはこの地域が西寄りの季節風,東側斜面での雪庇の発達や吹き溜まりによる大量の積雪の堆積,南北方向の地質構造によって同方向の稜線の山地が形成され,東向き斜面で雪崩が発生しやすくなったことが考えられる.</p><p> 一方,雪崩地形の分布や密集度は傾斜や積雪深,標高が主要な要素となる.雪崩地形の地形場は山地斜面,地すべり滑落崖,段丘崖などで多くみられ,積雪深については約1,5m以上で出現することが知られている.また,雪崩地形の密集度は新潟県において積雪深と相関する関係がみられ,1.5m以上で分散的,2.5m以上でやや密集,3m以上で高密度に分布するという傾向がみられた.そのため,飯豊山地においては高密度の分布を示すことから3m以上の積雪深が推定され,飯豊山地北東の調査地区においては分散的な分布のため1,5m以上の積雪深に達したと考えられる.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299859706340480
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_71
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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