集合住宅に在住する高齢者の目的別の外出頻度と要支援要介護リスクの関連

DOI
  • 成田 悠哉
    千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科作業療法学専攻
  • 江戸 優裕
    千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 島田 美恵子
    千葉県立保健医療大学歯科衛生学科
  • 岡村 太郎
    千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科作業療法学専攻

抄録

<p>(緒言)</p><p> 高齢者の介護予防の重点分野である閉じこもり予防支援において,外出頻度は閉じこもりのスクリーニング指標として用いられることが多い.高齢者の外出頻度の低下は,寝たきりへの移行や死亡率を高めることが報告されている1).外出の定義が要介護リスクに異なる影響を及ぼすことが報告されているが2),生活における目的別の外出頻度と要支援・要介護リスクの関連を検証した報告はみられない.</p><p> 本研究では地域高齢者を対象に目的別の外出頻度と基本チェックリストを活用した要支援・要介護リスク評価尺度の関連を検証することを目的とする.</p><p>(研究方法)</p><p> 3市町村の集合住宅に在住する地域高齢者を対象に2022年度に計3回実施した対面調査により,自記式質問紙にて回答が得られた45名を研究対象とした.日常生活に介助や介護が必要な者,65歳未満の者,回答に欠損がある者は解析から除外した.</p><p> 調査項目は,基本属性である年齢,性別,教育歴(6年未満,6~9年,10~12年,13年以上),独居(独居,誰かと同居)に加え,目的別の外出頻度,基本チェックリスト(生活機能の評価)とした.</p><p> 目的別の外出頻度は食品の買い物,外食,食品以外の買い物,通院,創作活動・習い事,散歩,散歩以外のアウトドア・スポーツ,会合,ボランティアや地域行事,近所での友人との交流,役所での手続き,文化施設(図書館,美術館,映画館),旅行,娯楽施設(カラオケ,スポーツ観戦,パチンコ),仕事(正社員,パート,アルバイト),入浴施設,宗教施設の17項目に対して,過去1年間の外出頻度を尋ね,毎日,週に4~6回,週に2~3回,週に1回,月に1~3回,半年に1~3回,年に1~3回,該当しないの中から回答を求めた.要支援要介護リスクは辻らの報告をもとに3),性・年齢を含む基本チェックリストの12項目で構成される要支援・要介護リスク評価尺度(0~48点)を用いた.</p><p> 統計解析はMann-Whitney U検定を用いて,目的別の外出頻度を週に1回以上と1回未満,月に1回以上と1回未満,年に1回以上と1回未満の3パターンに群分けし,それぞれの要支援要介護リスク得点を比較した.有意水準は5%とした.</p><p>(結果)</p><p> 解析対象者は31名となり,平均年齢79.1±4.5歳,女性23名(74.1%),教育歴10年目以上29名(93.5%),独居は16名(51.6%)であった.仕事へ週1回以上外出している群は,リスク得点が有意に低かった(平均値±標準偏差,週1回未満:19.6±5.9,週1回以上:13.8±3.8,P=0.036).文化施設に年1回以上外出をしている群は,リスク得点が有意に低かった(年1回未満:24.9±5.7,年1回以上:16.9±4.8,P=0.001).旅行に年1回以上外出をしている群は,リスク得点が有意に低かった(年1回未満:22.4±5.2,年1回以上:17.4±5.8,P=0.026).</p><p>(考察)</p><p> 地域高齢者の目的別の外出頻度と要支援要介護リスクの関連性を検証した結果,仕事や文化施設,旅行を目的とした外出頻度と要支援要介護リスクとの関連が示唆された.本研究においては,日常生活が自立している65歳以上の高齢者を対象とした検証ではあるが,横断調査であり因果関係は言及できないこと,交絡因子を十分に考慮できていないことが限界として挙げられる.</p><p>(倫理規定)</p><p> 本研究は,本学の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:2022-13).対象者には書面及び口頭にて説明を行い,同意を得た.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299859706364416
  • DOI
    10.24624/cpu.15.1_1_58
  • ISSN
    24335533
    18849326
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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