がん・生殖医療と周産期医療の連携に関する課題

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抄録

<p> 2004年にベルギーで,若年造血器腫瘍患者に対する卵巣組織凍結・融解卵巣組織移植による世界初の生児獲得の報告以来1),がんサバイバーシップ向上を目指したがん・生殖医療に関する取り組みが,欧米を中心に発展しつつある.がん・生殖医療とは,「がん患者の診断,治療および生存状態を鑑み,個々の患者の生殖能力に関わる選択肢,意思および目標に関する問題を検討する生物医学,社会科学を橋渡しする学際的な一つの医療分野である.臨床においては患者と家族が子どもをもつため,また,その意味を見つめなおすための生物医学的,社会科学的なほう助を行うことにより,生殖年齢およびその前のがん患者の肉体的,精神的,社会的な豊かさをもたらすことを目的としている(日本がん・生殖医療学会)」.本邦では,2012年に日本がん・生殖医療研究会(現学会)が設立され,2014年には日本産科婦人科学会から医学的適応による凍結保存に関する見解が出された.また,2017年には日本癌治療学会によって「小児,思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン」が刊行され,本邦においても本領域が一つの分野として確立しつつある.そして国は,第3期がん対策推進基本計画を2018年3月に閣議決定し,AYA世代がん患者に対する医療の課題および施策を明確化し,AYA世代がん医療の充実の1つとして生殖機能温存に関する文言が盛り込まれた.そして2021年4月から,国は,小児・AYA世代がん患者等に対する妊孕性温存療法に係る経済的支援を研究事業の一環として開始した.以上のように,本邦においてもがん・生殖医療を取り巻く環境が大きく前進しつつある.そして,2023年3月に閣議決定された第4期がん対策推進基本計画の8つのがん医療提供体制の一つとして,「妊孕性温存療法について」が加えられた.</p>

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  • CRID
    1390299903956040064
  • DOI
    10.34456/jjspnm.59.4_440
  • ISSN
    24354996
    1348964X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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