ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成に向けた公約の現状と課題

  • 齋藤 英子
    国立研究開発法人国立国際医療研究センター国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • State of commitment to universal health coverage and associated challenges

抄録

<p>目的 UHC2030は,2019年のUHC政治宣言のフォローアップのため,2020年から国連加盟国のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC: Universal Health Coverage)達成に向けた公約の進捗レビュー事業を実施し,UHC推進がとくに望まれる国の特定や,ステークホルダーへの働きかけ等の活動にも取り組んできた。本稿では,筆頭著者がUHC2030として取り組んできたUHC達成に向けた各国の現状と課題を特定するための公約の進捗レビュー事業を,日本の公衆衛生専門家に広く紹介するための総括として作成し,とくにその中から自発的国家レビューに関する本事業の調査結果を抜粋して解説した。</p><p>方法 UHC達成に向けた各国政府のエビデンスに基づく説明責任に関する行動を把握するため,国連ハイレベル政治会合(HLPF: High-level Political Forum)における,初期5年間の自発的国家レビュー(VNR: Voluntary National Review)報告書(2016年から2020年,187報告書)における,UHCや保健システムに関するすべての記載(量的および質的情報)を包括的にレビューした。さらに,2021年7月時点で入手可能だった最新のVNR報告書(40報告書)における記載と比較し,各国政府のエビデンスに基づく説明責任に改善がみられたかを評価した。</p><p>結果 2021年と初期5年間のVNR報告書を比較したところ,UHCや保健システムに関する各国のエビデンスに基づく説明責任の取り組みが拡充されていることがわかった。他方,国連統計として公表されているUHCや保健システムに関するデータ量と比べ,説明責任の場で指標が十分利用されていない。</p><p>結論 2023年9月にはUHC政治宣言フォローアップ会合およびSDGs中間レビューが国連総会で開催されたが,一部のUHC達成目標が2025年に延期され,2030年の目標達成も困難な状況となってきている。既存の国連統計を用いた政府のエビデンスに基づく説明責任の強化と,すでに合意された政治宣言の実施によるUHC推進のさらなる強化が喫緊の課題である。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299926126129280
  • DOI
    10.11236/jph.23-089
  • ISSN
    21878986
    05461766
  • PubMed
    38267046
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • PubMed
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ