歯根形態異常および歯根吸収を呈する根尖膿瘍に対して意図的再植を行った1症例

DOI
  • 堅田 千裕
    大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座
  • 岡本 基岐
    大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座 Department of Oral Science and Translational Research, College of Dental Medicine, Nova Southeastern University
  • 栗木 菜々子
    大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座
  • 泉井 陽菜
    大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座
  • 井上 愛弓
    大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座
  • 藤原 茉優
    大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座
  • 木ノ本 喜史
    大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座
  • 林 美加子
    大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座

書誌事項

タイトル別名
  • Successful Intentional Replantation for Apical Abscess due to Root Resorption and Abnormal Root Morphology: A Case Report

抄録

<p> 目的:歯根吸収や根面の形態異常は,歯内療法や歯周病治療の成否に大きく影響を与える.歯科用コーンビームCT(CBCT)画像により術前に三次元的な患歯の形態が把握可能になった現在も,これらの要因により非外科的な歯内療法で成功に導くことができない場合がある.今回,う蝕治療3年経過後に,歯根吸収および破折線と連続する根面溝が観察された上顎右側第二小臼歯に対して,意図的再植を実施することで良好な治癒が得られたので,その治療経過について報告する.</p><p> 症例:患者:19歳,女性.主訴:上顎右側小臼歯部の違和感と咬合痛.</p><p> 全身的既往歴:特記事項なし.</p><p> 現病歴:約3年前に,近医で上顎右側第二小臼歯のう蝕治療を行った.翌年,同歯に自発痛を覚えたため,近医を受診した.冷刺激に対して歯髄反応があり,咬合調整により症状が治まったため経過観察となった.8カ月後,再び自発痛を自覚したため,近医を受診.デンタルエックス線検査の結果,歯髄形態の異常が原因と考えられたため,当院受診となった.</p><p> 臨床所見:上顎右側第二小臼歯,自発痛(-),打診痛(+/-,違和感),歯肉腫脹(+),動揺0度,根尖部圧痛(+/-,違和感),瘻孔(+),電気歯髄診(+),冷刺激痛(+),近心のみ6mmのプロービング深さを認めた.瘻孔から挿入したガッタパーチャポイントは根尖部に到達し,歯髄腔の形態が不鮮明で内部吸収が疑われた.</p><p> 診断:上顎右側第二小臼歯,慢性根尖膿瘍,歯髄部分壊死,内部吸収.</p><p> 治療経過:CBCT画像検査の結果,内部吸収および外部吸収により根管形態が複雑化していると考えられた.非外科的歯内療法により臨床症状の改善を試みるも,近心から髄床底にいたる破折線と根面溝が交通することで,持続的な感染を遮断することができないことから意図的再植術を選択した.浸潤麻酔下にて患歯を抜去し,口腔外で拡大視野下にて歯根端切除と逆窩洞形成を行い,最小限の切削により感染源を除去した.逆根管充塡にはレジン添加型MTAセメント,根面溝および破折線には4META/MMA-TBBレジンをそれぞれ充塡した.術後1カ月には臨床症状は消失し,術後17カ月で撮影したCBCT画像から根尖部透過像が消失していることが確認されたため予後良好と判断し,経過観察を行っている.</p><p> 結論:歯根吸収および破折線に連続する根面溝の存在のため持続的な感染を遮断できなかった上顎右側第二小臼歯に対して,意図的再植を実施することで良好な経過が得られた.</p>

収録刊行物

  • 日本歯科保存学雑誌

    日本歯科保存学雑誌 67 (2), 117-125, 2024-04-30

    特定非営利活動法人 日本歯科保存学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390300058784118656
  • DOI
    10.11471/shikahozon.67.117
  • ISSN
    21880808
    03872343
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ