人工芝競技場由来のマイクロプラスチックの自然環境への流出防止装置の作製

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タイトル別名
  • Development of a device to prevent the release of microplastics from artificial turf sports field into the natural environment

抄録

<p>[緒言]</p><p> 海洋マイクロプラスチックごみの問題は,世界規模の環境問題のひとつである.マイクロプラスチックの発生源はさまざまであるが,我々は,これまでに人工芝競技場の表層構成物である人工の芝葉およびゴムチップが,マイクロプラスチックごみとなりうることを示した.そこで本研究では,人工芝競技場からの芝葉およびゴムチップの環境への流出を防止するための装置(トラップ)を作製し,その効用性について検討した.</p><p>[方法]</p><p> 1)はじめに,下水管へとつながる排水枡を模したプラスチックコンテナを用いてシミュレーション実験を行った.コンテナの壁面に穴をあけ,実際の下水口のパイプと同じサイズの塩ビパイプをコンテナ壁面の穴に取り付けた.このパイプに種々のメッシュ数の金網で作った籠状のトラップをコンテナの内側にはめ込んだ.コンテナ内に芝葉あるいはゴムチップを入れ,水を注入し,芝葉およびゴムチップのコンテナ外への流出をどれだけ阻止できるか,トラップをつけない場合のコンテナ内の残存量と比較した.なお,トラップの作製費用は,使用した金網のメッシュ数(網目の細かさ),材質により異なるが,1つのトラップを作製するのに要した材料の費用は,360円−11,000円であった.</p><p> 2)次に,前述の要領で制作したトラップを実際の人工芝競技場の排水枡の下水口のパイプに装着して実証試験を行った.競技場の芝葉およびゴムチップは,雨水により競技場周囲の水路を経て排水枡に流れ込む.そして,排水枡の芝葉やゴムチップは,雨水とともに下水口から下水管へと流れる.ここでは,トラップをつけた場合とつけない場合に,排水枡に溜まる芝葉とゴムチップの残存量を計測して比較をした.</p><p> 3)最後に,排水枡の深さにより,芝葉やゴムチップの流出に与える影響についてもシミュレーション実験を行って調べた.その際,トラップは使用せずに,排水枡の下水口までの深さを2段階に設定したコンテナを作製し,排水枡の深さの違いにより芝葉とゴムチップのコンテナ外への流出量が変化するかどうかを調べた.</p><p>[結果]</p><p> 1)トラップをつけることにより,コンテナ内の芝葉とゴムチップの流出は,トラップをつけない場合と比べて大きく阻止された.</p><p> 2)実証試験においても,トラップをつけることにより,排水枡内の芝葉とゴムチップの流出は,トラップをつけない場合と比べて大きく阻止された.</p><p> 3)水深の深いコンテナでは,水深の浅いコンテナよりも芝葉とゴムチップの流出が少ないことが示された.</p><p>[考察]</p><p> 今回,我々が作製した金網製のトラップは,人工芝競技場からの芝葉とゴムチップの環境への流出を防止することが可能であると考えられる.また,排水枡の深さを深くすることにより,より多くの芝葉とゴムチップが排水枡内に滞留することも明らかとなった.本研究で作製したトラップには,特別な技術や材料を必要とせず,材料の購入費用も安価であった.今後は,トラップの実用化に向けて,トラップの耐久性や維持管理方法およびその制作・設置にかかる労力について検討する必要がある.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390300069820807168
  • DOI
    10.51064/jkshs.57.1_17
  • ISSN
    24367249
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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