トルコ絨毯のオーセンティシティが不問に付されるまで

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • The Decline Process of the Question of Authenticity
  • On the Global Trend of the Turkish Patchwork Rugs
  • パッチワーク絨毯のグローバルな流行をめぐって

抄録

<p>本稿は、トルコで発案・生産された「パッチワーク絨毯」と呼ばれる製品とさらにその模倣品を事例として、手仕事の現代的展開の特徴について論じることを第1の目的とする。まずこの新しい絨毯が誕生した経緯を概観し、観光客向けトルコ絨毯商やオンラインショップでの販売を通してグローバルな消費者に届くまでの流通過程におけるオーセンティシティや「手仕事」性の表現のされ方、そしてそれらが次第に後退してゆく状況を明らかにする。さらに2010年代には、パッチワーク絨毯のデジタル画像を転用したパッチワーク風機械製プリント絨毯も登場し、トルコ国内外で安価に大量販売されるに至った。そこではもはやオーセンティシティや「誰の」布であるかは不問に付され、「ヴィンテージな雰囲気」をまとった視覚的消費だけが肥大化している。</p> <p>また、本稿の第2の目的は、パッチワーク絨毯の流行がトルコの既存の手織り絨毯産業に与えた影響を明らかにすることである。この新しいタイプの絨毯は、グローバル市場を相手に大々的な展開を見せ、停滞する国内既存絨毯産業に当座の恩恵をもたらした。しかしながら、パッチワーク絨毯の生産者やそれらを扱うトルコの手織り絨毯商人は、元は「手織り」ではあっても既存絨毯とは全く異質なパッチワーク絨毯を酷評したり、それを扱うことに誇りがもてないなどという葛藤を抱えてもいた。彼らがいかにこれらを商品としてアピールし、ジレンマと付きあってきたのかを検討する。</p>

収録刊行物

  • 文化人類学

    文化人類学 88 (3), 562-578, 2023-12-31

    日本文化人類学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390300080901258880
  • DOI
    10.14890/jjcanth.88.3_562
  • ISSN
    24240516
    13490648
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ