メートル長高分離能光学分割カラムを用いる食酢中アラニン及びセリン鏡像異性体の分析

書誌事項

タイトル別名
  • Analysis of Alanine and Serine Enantiomers in Vinegars Using a Meter-long High-resolution Enantioselective Column

説明

<p>近年,L-アミノ酸の鏡像異性体であるD-アミノ酸の存在が微量ながら哺乳類体内で明らかにされ,特にD-セリン(D-Ser)やD-アラニン(D-Ala)などは新規機能性分子として注目を集めている.経口摂取したD-アミノ酸が哺乳類組織に移行することから,D体を天然に含有する食品や飲料は機能性食材候補として注目され,アミノ酸の正確なキラル識別含量解析が期待されている.しかし,微量なD-アミノ酸を正確に定量するためには十分な鏡像異性体分離に加えて分析法の選択性向上が課題であり,光学分割カラムの伸長による分離場の増加は双方の改善に効果的であると考えられる.そこで本研究では,メートル長光学分割カラムを装備したキラルHPLCシステムの開発を行い,カラム伸長に伴う分離能変化を評価するとともに,代表的な発酵食品である食酢試料中のAla及びSer鏡像異性体の含量解析を行った.その結果,カラム伸長に伴い対象アミノ酸の鏡像異性体分離度(Rs)及び実効理論段数(Neff)が向上し,全長1000 mmのカラムでは250 mmのカラムを用いた結果と比較してRsが1.5–1.6倍,Neffが2.2–2.3倍であった.また,メートル長カラムを装備したキラルHPLCにより,食酢試料中のAla及びSer鏡像異性体について夾雑成分による妨害を低減した含量解析が可能であった.本分析法を用いて,穀物酢,純米酢及びさまざまな黒酢におけるAla,Ser鏡像異性体の含量解析を行った結果,伝統的製法で醸造された黒酢にはD体が多量に含まれていることが示された.特に鹿児島県内で製造された黒酢中のD-Ala及びD-Ser含量はそれぞれ1.79–5.58 μmol mL−1及び0.12–0.89 μmol mL−1であり,高濃度の存在が認められた.加えて,発酵熟成期間の延長に伴いD-Ser含量が有意に増加することも明らかにし,長期発酵熟成黒酢の機能性食材としての有用性が示された.</p>

収録刊行物

  • 分析化学

    分析化学 73 (7.8), 337-344, 2024-07-05

    公益社団法人 日本分析化学会

参考文献 (29)*注記

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