タクロリムス誘発性神経毒性の解析及び、喘息治療薬イブジラストの神経保護作用の評価
書誌事項
- タイトル別名
-
- Investigating tacrolimus-induced neurotoxicity and ibudilast as a drug repositioning candidate for neuroprotection
説明
<p>免疫抑制薬タクロリムス(TAC)の有害事象として、振戦等の神経障害が知られているが、その発生機序は未だ解明されておらず、臨床的な対策も取られていない。本研究はTAC誘発性神経障害の機序解明および、気管支喘息に対する既承認薬で神経保護作用を有する非選択的ホスホジエステラーゼ阻害薬であるイブジラストの神経保護効果を評価し、ドラッグリポジショニングの可能性の探索を目的とした。</p><p>ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を用いたin vitro実験では、TACが用量依存的にアポトーシス細胞死を誘導し、イブジラストはTACによる細胞死を軽減した。TAC誘発性神経障害を解剖学的、行動学的に評価するため、WistarラットにTAC(2.5または5.0mg/kg/日)を1日1回14日間皮下投与した動物モデルを作成した。またイブジラスト(7.5mg/kg/日)はTAC(5mg/kg/日)投与の2日前から1日1回腹腔内に投与した。神経障害は、投与前、8日目、および15日目に評価し以下に従いスコアを算出した:スコア0(神経障害の徴候なし)、スコア1(震え、軽度の発作、または過敏性)、スコア2(明確な震え、発作、または極度の過敏性)、スコア3(重度の発作または暴力的行動)。結果、TAC(5mg/kg/日)投与群では投与開始15日目で慢性神経毒性が認められ、これはイブジラストにより有意に減少した。脳摘出後の解析から、TACの脳内移行が認められ、脳中TAC濃度は神経毒性スコアと相関していた。イブジラスト投与は脳中TAC濃度にはは影響を及ぼさなかった。Nissl染色とTUNEL染色を用いた病理組織学的評価では、TAC投与群において大脳皮質と海馬CA1領域に神経細胞損傷が多く、CA3領域、歯状回、小脳には細胞損傷は見られなかった。イブジラストの併用により、これらの病理組織学的変化は顕著に抑制された。</p><p>結論として、TAC誘発性神経障害はTACの脳内移行とそれに続く大脳皮質とCA1領域における神経細胞障害に起因することが考えられ、さらにイブジラストはこの有害事象に対する有望な保護薬であることが示された。</p>
収録刊行物
-
- 日本毒性学会学術年会
-
日本毒性学会学術年会 51.1 (0), P-263-, 2024
日本毒性学会