心筋の虚血・親電子ストレス耐性における硫黄代謝の役割
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- 西村 明幸
- 生理学研究所心循環シグナル研究部門
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- Xiaokang TANG
- 生理学研究所心循環シグナル研究部門
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- 加藤 百合
- 九州大学大学院薬学研究院生理学分野
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- Xinya MI
- 九州大学大学院薬学研究院生理学分野
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- 西田 基宏
- 生理学研究所心循環シグナル研究部門 九州大学大学院薬学研究院生理学分野
書誌事項
- タイトル別名
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- Supersulfide catabolism underlies cardiac vulnerability to ischemic and electrophilic stress
説明
<p>心筋細胞の頑健性は、その優れたレドックス反応によって支えられており、レドックス恒常性の破綻は心疾患の発症と進行につながっている。近年、これまで測定が困難であった硫黄代謝物を同定する質量分析技術が飛躍的に発展したことで、硫黄原子が複数個連続で連なった超硫黄分子(R-SnSH)と呼ばれる反応性の高い硫黄代謝物が生体内に豊富に存在していることが明らかとなり、レドックス恒常性を支える新しいプレーヤーとして注目されている。本研究では、心臓の頑健性を維持する上での超硫黄分子を中心とした硫黄代謝の役割、そして硫黄代謝の異常が虚血や親電子ストレスによる心筋の機能破綻に及ぼす影響を解き明かすことを目的とした。</p><p>虚血や親電子ストレスによって心筋細胞内の超硫黄分子が硫化水素へと還元代謝されることを見出した。この超硫黄分子の異化反応は心筋ミトコンドリアの過剰分裂を引き起こすことで心筋細胞の収縮機能を低下させた。そのメカニズムとしてタンパク質システイン側鎖の超硫黄化に着目し、低酸素や親電子ストレスによるミトコンドリア分裂促進因子Drp1 Cys644の超硫黄化の減少がミトコンドリアの異常分裂誘導することを見出した。また、Drp1は酸化型グルタチオンGSSGによってCys644がグルタチオン化修飾されることを見出した。GSSGによるDrp1のグルタチオン化は低酸素や親電子ストレスによるDrp1活性化を抑制することで心機能障害を改善することが明らかとなった。GSSGの心筋保護効果をマウス個体レベルで評価するために心筋梗塞処置1週間後からGSSGを4週間投与した。その結果、Drp1グルタチオン化の亢進に伴い、心機能の改善が見られた。これらの結果から、超硫黄化およびグルタチオン化を介したDrp1 Cys644のレドックス修飾は心筋の虚血・親電子ストレス耐性に重要であることが示唆された。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 51.1 (0), S2-2-, 2024
日本毒性学会