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- 横山 剛
- Assistant Professor, University of Tsukuba, PhD
書誌事項
- タイトル別名
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- On Knowledge (<i>jñāna</i>) in Chapter IX of Daśabalaśrīmitra’s <i>Saṃskṛtāsaṃskṛtaviniścaya</i>
説明
<p> ダシャバラシュリーミトラ著『有為無為決択』は,インド仏教における主要学派の教理の大要を伝える学説誌的な文献である.その第二章から第十二章は有部説に充てられ,第九章では法体系が説かれる.そこでは有部の伝統的な十智ではなく,如説智(*yathāruta-jñāna)と修智(*parijaya-jñāna)を加えた十二智が説かれる.本稿ではこの十二智の成立背景について検討する.</p><p> はじめに,筆者がこれまでの研究で明らかにしたチャンドラキールティ著『中観五蘊論』→アバヤーカラグプタ著『牟尼意趣荘厳』→『有為無為決択』という法体系の系譜,ならびに『牟尼意趣荘厳』が説く十二智から,『有為無為決択』の十二智の直接的な典拠が『牟尼意趣荘厳』であると考えられることを指摘する.その上で『牟尼意趣荘厳』の十二智へと考察を進める.</p><p> ここではまず,如説智と修智が『二万五千頌般若経』が挙げる十一智の中に見られることを指摘する.般若経では智の要素として十一を挙げるが,『二万五千頌般若経』の説はこれと部分的に異なる.本稿では,般若経の十一智の特徴と『二万五千頌般若経』が説く十一智の特異点を示す.続いて,各智の定義を比較することで,『牟尼意趣荘厳』と『二万五千頌般若経』の智の定義が有部説とは異なり,いくつかの智については両論に逐語的な一致が見られることを指摘する.</p><p> 以上の考察から『有為無為決択』の十二智について,次の成立過程が想定される.まず,大乗仏教の影響下にあったアバヤーカラグプタが『牟尼意趣荘厳』において,般若経の伝統と有部説を折衷して,十二智を説いた.現存の般若経では『二万五千頌般若経』に最も顕著な類似性が見られる.ダシャバラシュリーミトラはこの十二智を引き継ぎながらも,有部の伝統に合わせて,その順序を入れ替えた.このように本稿では,有部の十智に基づいて形成された般若経の十一智が後に有部説と合わさり十二智が成立するという,有部と大乗仏教の間の双方向的な影響関係が示される.</p>
収録刊行物
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- 印度學佛教學研究
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印度學佛教學研究 72 (3), 1022-1027, 2024-03-25
日本印度学仏教学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390301408039541632
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- ISSN
- 18840051
- 00194344
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- Crossref
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可