血管細胞への分化における細胞膜メカノセンサーの役割

  • 山本 希美子
    東京大学 大学院医学系研究科 医用生体工学講座 システム生理学
  • 安藤 譲二
    獨協医科大学 医学部 生体医工学研究室

説明

<p>血管内皮細胞(ECs)は剪断応力や伸展張力などの血行動態の変化に応じて機能を変化させることにより、循環系の恒常性を維持している。しかし、ECsが剪断応力や張力の変化をどの様に区別して感知し、細胞内の生化学的なシグナルに変換するのかは未解決の問題が多く残されている。以前我々は、マウス胚性幹(ES)細胞に剪断応力または、伸展張力を負荷すると、ECsと平滑筋細胞(SMCs)にそれぞれ分化が特異的に誘導されることを見出した。そこで、細胞が剪断応力と伸展張力をどの様に区別して感知するのか検討した。剪断応力と張力に対して、細胞膜は膜流動性や脂質分子の配向性、コレステロール含量の変化が異なることが明らかになった。また、人工脂質二重膜でも剪断応力と張力に対して、生細胞と同様の変化が見られたことから、細胞膜の物性変化は、生体反応というよりは物理現象であることが示された。この様な膜の物性変化は、膜タンパク質の構造を変化させ、それらの活性化に影響を及ぼし、特異的な細胞応答を引き起こす。特に、剪断応力の刺激により血管内皮増殖因子受容体(VEGFR-2)がリン酸化された一方で、伸展張力により血小板由来増殖因子受容体(PDGFRβ)がリン酸化された。VEGFR-2とPDGFRβそれぞれのリン酸化阻害剤を作用すると、剪断応力と伸展張力によるECsとSMCsへの分化が誘導されなくなった。以上の結果は、細胞膜が剪断応力と伸展張力を分けるメカノセンサーとして働くことを示唆する。</p>

収録刊行物

  • 生体医工学

    生体医工学 Annual62 (Abstract), 96_1-96_1, 2024

    公益社団法人 日本生体医工学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390301949908327808
  • DOI
    10.11239/jsmbe.annual62.96_1
  • ISSN
    18814379
    1347443X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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