狂犬病を取り巻く国内外の現状と今後の課題

  • 伊藤 直人
    岐阜大学 応用生物科学部 共同獣医学科 人獣共通感染症学研究室
  • 西園 晃
    大分大学 医学部 微生物学講座 大分大学 グローカル感染症研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Current situations and future issues surrounding rabies in Japan and other countries
  • キョウケンビョウ オ トリマク コクナイガイ ノ ゲンジョウ ト コンゴ ノ カダイ

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説明

狂犬病は,犬などの哺乳動物を感染源とするウイルス性中枢神経系感染症であり,長い潜伏期間(平均数ヶ月)とほぼ100%の高い致死率を特徴とする.非常に効果の高いワクチンが存在する一方で,現在も確実な治療法は確立されていない.日本では,狂犬病予防法に基づき,犬の予防注射などの対策を徹底した結果,1957年に本病の撲滅に成功している.その後,日本では,本法に基づき,国際的に見ても厳格な狂犬病対策を継続してきた.一方,海外で感染した人が日本にて発症する,いわゆる輸入症例が,現在までに計4例確認されている.2020年5月に豊橋市で確認された4例目の輸入症例は記憶に新しい.2022年4月にはウクライナからの避難民が日本に同伴した犬の検疫に特例措置が取られたことで狂犬病の国内侵入を懸念する意見も多く聞かれた.さらに最近では,2024年2月,群馬県において複数の人を咬んだ犬が,狂犬病予防法で義務づけられた予防注射を受けていなかった事件を受け,狂犬病やその発生リスクについて強い関心が集まった.そこで本稿では,最近,大きく注目された狂犬病に焦点をあて,本病がどのような感染症かについて解説する.さらに狂犬病対策や医療の国内外の現状について概説しながら,今後の課題についても論じたい.

収録刊行物

  • ウイルス

    ウイルス 74 (1), 1-8, 2024

    日本ウイルス学会

参考文献 (17)*注記

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