O-1-①-3 カルバマゼピンとエリスロマイシンの併用後に低血糖がみられた重症心身障害児(者)

  • 鈴木 清高
    独立行政法人 国立病院機構 豊橋医療センター

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はじめに エリスロマイシン(EM)など14員環マクロライド系抗菌薬は、本来の抗菌作用とは別に、気道分泌抑制作用や抗炎症作用などが解明されている。 症例 42歳男性。在胎37週、1,700gで出生。4歳時に急性脳症にて加療後、当院に入院となった。坐位可も自力歩行不可、重度精神発達遅滞あり。バルプロ酸ナトリウム(VPA)やカルバマゼピン(CBZ)などを継続内服していた。41歳時(X-8月)の胸部CTで、空洞および膿瘍を伴う浸潤影様像がみられ、抗生剤の点滴を行った。X月Y-23日の胸部CTで、空洞様所見を伴う浸潤影様像が再度みられ、同日からY-10日まで抗生剤の点滴を実施し、Y-17日よりEMの内服を併用(15.5mg/kg/日)した。Y-6日に活気不良および摂食不良がみられ、補液を再開した(血糖は55mg/dl)。Y-1日に点滴を終了したが、Y日の昼食前に活気不良となり、嘔吐・顔色不良・手足冷感もみられ、補液を再開した。Y日に、血糖37mg/dl、VPA93μg/ml、CBZ14.9(正常4-12)(X-1月は5.6)μg/ml、血清遊離カルニチン濃度(FC)14.9(正常36-74)μmol/l、血清アシルカルニチン濃度(AC)5.0(正常6-23)μmol/l、AC/FC比0.336(正常0.4未満)であり、EMの内服を中止した。補液再開30分後に血糖は51mg/dlとなり、その後も血糖の低下はみられなかった。Y+4日にCBZは6.4μg/mlと低下した。(FC・AC・AC/FC比)は、X-36月(20.5・3.3・0.161)・X-30月(28.5・5.1・0.179)・Y+21日(11.8・2.2・0.186)であった。 考察 EMなどのマクロライド系抗菌薬はシトクロムP450(CYP)3A4を阻害し、CBZの代謝が阻害され、CBZの血中濃度が上昇する。EMの内服併用でCYP3A4が阻害された場合、不対電子を持つCBZの中間物質が電子を供給する立場となり、電子を受け取る役割を持つNADが電子を受け入れることでNADがNADHへ移行し、NAD:NADH比が低下し、低血糖がみられる状況につながり、AC/FC比が一過性に上昇した可能性があったと考えた。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390303553577915904
  • DOI
    10.24635/jsmid.47.2_260_1
  • ISSN
    24337307
    13431439
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
  • Abstract License Flag
    Allowed

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