Report on the "Human-Nature Relationship Survey" for Habitat Conservation of Cranes and Storks in the Uwa Basin

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  • 宇和盆地におけるツル・コウノトリの生息環境保全に関する「ふれあい調査」の実践報告

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<p>1.背景と目的 近年、愛媛県西予市西部に位置する宇和盆地では絶滅危惧種であるナベヅル,マナヅル,コウノトリの断続的な飛来および越冬が確認されている。特に2009年のコウノトリの初飛来以降,その主な飛来地となっている宇和盆地西部では,コウノトリ巣塔の設置,渡来重点エリアの設定,地域住民による見守り隊の設置,デコイによる誘因,湛水田・ねぐらの設置などの越冬環境整備,各種モニタリングの実施,各種計画類の策定などの公民協力体制によるツル・コウノトリの生息環境保全にかかる活動が現在まで行われている。このうち各種計画類の策定については,上記した各種取組を包括し,今後のツル・コウノトリの生息環境保全のあり方を示す計画が策定されていなかったことから,2019年から2021年にかけて行われた住民および農家へのアンケート調査,地区住民座談会,専門家との協議等を経て2022年4月に「西予市ツル・コウノトリと共生するまちづくり計画(以下まちづくり計画)」が公表されている(西予市 2022)。ナベヅル,マナヅル,コウノトリはいずれも里地性の生息環境を志向することから,その生息環境保全のあり方を検討するうえで人間活動との関係を考慮する必要がある。宇和盆地にツル・コウノトリが断続的に飛来していることは,その自然環境がこれらの生息環境に適していることに他ならないが,その基盤となっているのは,その生育環境保全への意識は別にしても,こうした環境を形成してきた宇和盆地における歴史的および日常的な人と自然との関係のあり方である。そこで,発表者を含むまちづくり計画策定委員会では,計画策定にあたってツル・コウノトリの生息環境保全の基盤となる宇和盆地における人と自然との関係を明らかにすることを目的とする「ふれあい調査」を実施した。本報告はそのうちの「五感によるふれあいアンケート」の実践報告である。</p><p>2.方法 「ふれあい調査」は日本自然保護協会が環境社会学者とともに考案した質的な環境調査の総称であり,地域住民が主体となり地域の歴史的・日常的な自然との関わりを調べ,その結果を環境保全や地域づくりに活用することを目的としている(NACS-Jふれあい調査委員会 2010)。具体的な手法としては「五感によるふれあいアンケート」「ふれあい懇談会」「ふれあい発見ワークショップ」「ふれあいマップ作り」等から構成されており,このうち本調査で実施した「五感によるふれあいアンケート」は心象図法(上田 2014)をもとに作成された五感を通じた自然とのふれあいを想起させる自由記述式のアンケート調査であり,具体的には回答者の地域における自然に関する風景,音,匂い,感触,味,およびこれからも大切にしたいふれあいについて問うものである。本調査を通じて,回答者の内面に記憶された自然とのふれあいが掘り起こされるとともに,その総合により地域の歴史的および日常的な人と自然との関係が明らかになるものと考えられる。本調査における「五感によるふれあいアンケート」は2019年度から2021年度にかけて宇和盆地の範囲に相当する旧宇和町住民を対象として断続的に行われ,最終的に計330の回答を得た。なお、同回答中の161回答は郵送式(回収率10.4%)によるものであるが,15回答はツル・コウノトリの主な飛来地である石城地区住民への対面調査によるものであり,154回答は旧宇和町を校区とする宇和中学校生徒への自然教室時に回収されたものである。次いで,得られた回答結果をKH coderによる計量テキスト分析を用いて、回答中の頻出語やその連関,およびこれらの年代別・地区別相違等を検討した。これらの結果の詳細については本報告の発表にて紹介する。</p>

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