Possibility of Evaluating Flood Risk by Geographical Names related to Flood Disasters
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- Tsuchida Kodai
- Geography Major, Area Studies Program, Department of Humanities, College of Letters, Ritsumeikan University
Bibliographic Information
- Other Title
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- 水害関連地名による水害危険性の評価の可能性
- ―木津川市旧木津町域を事例に―
- A Case of Old Kizu Town Area, Kizugawa City
Description
<p>1. はじめに</p><p> 災害による人的被害の低減や地域の持続性の向上が一層求められる現在において、地名への理解を深めることで、地域防災に役立てようとする研究が行われている。地名は地域の自然、住民の生活や文化などを表すことがあり、特に過去の自然災害の被害や災害に繋がる土地条件などの災害素因を示す地名は「災害地名」と呼ばれる。災害地名は、地域の災害史を知り伝承するための語り部として機能することが期待される。しかし、かつて災害地名のあった土地が開発され、従来の土地の地理的特徴と異なる意味の地名に置き換わることで、従来の災害地名の意味を把握し、それを共有し伝承することや、地名に基づき災害を予測することが困難になりつつある(宇野・谷口 2020)。そのため、災害危険性を考えるには、地名の由来に含まれる災害履歴や災害素因にも着目することが重要であると言える。</p><p> そこで、本研究では災害履歴や災害素因となる自然地形の視点も加味して水害関連地名の特性を分析することで、水害関連地名による水害危険性の類推の可能性を検討することを目的とする。具体的には、①水害関連地名の由来・地形条件・水害履歴、②開発前後での類推の精度の変化、に着目して分析する。</p><p></p><p>2. 調査の概要</p><p> 京都府木津川市のうち、合併前の旧木津町域を対象地域とした。『木津町史』(木津町史編纂委員会編 1987)から旧木津町における1980年代以降の開発前の大字地名と小字地名を特定し、現在の地名と比較することで、住所表記の地名が現存するかを確認した。これらの地名について、地形条件・水害履歴・災害地名の書籍などを参照して分析し、水害関連地名と考えられる地名を推定した。水害関連地名の推定では、洪水の危険性が高い「洪水地名」と、土砂災害の危険性が高い「崩壊地名」に分類し、いずれに該当するかを検討した。</p><p></p><p>3. 分析結果・考察</p><p> 旧木津町から大字地名は7件、小字地名は250件抽出された。また、開発前と現在の地名を比較した結果、同一の区画で現存する小字地名は166件、区画が改変された小字地名は49件、消失した小字地名は35件あった。洪水地名と考えられる地名は54件、洪水地名の可能性がある地名は109件、洪水地名と言えない地名は88件認められ、崩壊地名も同様にそれぞれ77件、89件、85件認められた。</p><p> まず、洪水地名を分析した結果、実際の氾濫原低地の分布に近い形で洪水地名が多く分布することが確認された。旧木津町の平地では地形や土地利用の変化が比較的少ないため大半の地名が残存し、それにより文献から水害発生箇所を特定しやすいことが関係していると考えられる。ただ、条里制や環濠集落などの地域の歴史に由来する地名も数多く見られたため、地名以外の要素を考慮しないと洪水地名としての類推は困難である。</p><p> また、崩壊地名は土砂災害の発生しやすい丘陵地に多く分布し、その多くが消失したり、区画が縮小したりしている。丘陵地の谷底低地に散見される「谷」の付く地名が有していた土砂災害への警鐘の機能が失われ、高台を想像させる「台」の付く住宅地名に置き換わっている。したがって、開発前では地名による土砂災害の危険性の類推が可能であったが、開発に伴う地形と地名の改変により、地名に限らずその土地の水害の危険性とその履歴も潜在化されたと言える。</p><p> 以上のように、災害素因となる自然地形分布や水害履歴による小字単位での水害関連地名の推定を通して、より個別の環境に即した洪水や土砂災害の潜在的な危険性を一定程度類推することが可能であるが、高精度な類推は困難であると考えられる。本研究では、開発前においては洪水地名と崩壊地名の間で類推の精度に大差は見られなかったが、丘陵地の地名の大半が改変されたため、現在では洪水地名が水害危険性をより類推しやすくなっていると言える。</p><p></p><p>文献</p><p>宇野宏司・谷口夏海 2020. 水害地名とオープンデータを活用した簡易洪水浸水リスク評価手法の提案.土木学会論文集 76(2): 493-498.</p><p>木津町史編纂委員会編1987.『木津町史』木津町.</p>
Journal
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- Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers
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Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers 2025s (0), 296-, 2025
The Association of Japanese Geographers
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390303697452819840
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- Text Lang
- ja
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- JaLC
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- Abstract License Flag
- Disallowed