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Changes in food supply-demand due to the Covid-19 calamity and the response for production areas in the rice market
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- SASAKI Toru
- Hosei University
Bibliographic Information
- Other Title
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- コロナ禍による食料需給の変化とコメ市場への産地対応
Description
<p>日本のコメ市場が揺らいでいる.近年まで下落基調にあった米価が2024年に入って上昇傾向に転じ,8月以降の米不足の懸念から小売店の店頭からコメが消えた「令和のコメ騒動」として報道がなされた(日本経済新聞2024年9月1日付).今期の米価上昇の理由は,昨夏の猛暑による市場流通量の減少,円安を背景に膨らんだインバウンド消費の増加,麺類やパン類などの値上による消費拡大,8月に発表された南海トラフ地震臨時情報など様々な理由が指摘されている.しかし,米価の急騰は目新しい現象ではない.例えば,1993年は冷害に端を発したコメ不足は「平成の米騒動」と呼ばれ,米価の急上昇をもたらした.また,東日本大震災の翌年の2012年と2013年も供給不安によって米価が上昇したのであった.しかし,ここ20年間の期間を見渡すと米価は長期的な下落トレンドにあった.生産調整政策も実施されているが,米価の変動(下落)は基本的に需給問題と見られてきた.例えば,供給過剰説によれば,米価の下落は作付け過剰,新規需要米やMA米の主食用米市場への影響とされ,需要減退説によれば,米以外の消費増加による需要縮小,デフレによる低価格志向が指摘されてきた.他方,過剰米の処理システムの機能不全や売れ残り回避のための過当競争が生じたとみる流通制度説も米価変動の一因として語られている.これらの需給問題に従えば,今回の「令和のコメ騒動」に代表される米価上昇は,供給不足,需要増大,在庫不足といったことが絡み合って生じたということになるが,一過性のものとして処理される.こうした米価の一時的変動は価格をシグナルとして調整されて需給の均衡が達成されるはずだからである.したがって,需給問題はある時期の米価変動の説明には有効であるが,他方,なぜ米価の変動が繰り返されるのかという問いに対しては説得力をもたない.むしろ,コメの消費量の減少の下で生産調整政策によって供給を抑制的にしてきたにもかかわらず,米価が変動する理由は市場構造それ自体に問題を抱えているとみることが妥当であろう.その市場構造の特徴とは,①長期的トレンドとしての需給緩和(コメ余り)のもとでの生産調整の強化,②コメ余りの回避策としての転作(新規需要米含む)による供給抑制,③価格形成機能不全のもとでの産地間競争の激化(ブランド化,安売り)のことを指す.さらに,こうした市場構造の下で米価変動が繰り返されるなかで,各コメ産地はそれぞれの対応が迫られ,その結果として産地の地域構造の再編をもたらしている可能性がある.特に,その再編が売れるコメと売れないコメに分化することによって産地間の序列を変化させているとみられる.そこで,本研究は米価の変動がいかなる論理で発生したのかを分析し,産地構造がどのように再編されているのかを明らかにすることを目的とする.その際に,米価変動と主要産地の対応を東日本大震災以後(2012~2014年),コロナ禍(2020~2022年),そして予察的に令和のコメ騒動(2023年~現在)の各時期に注目してコメ市場をめぐる産地間競争の現局面を考察する.そして,現在の生産調整下では米価の変動は不可避的に生じる構造的問題であることを指摘する.</p><p>2000年代以降の米価変動の動向をまとめると,東日本大震災前後の米価変動は,未曽有の災害と先行き不安視の中から生まれたコメ市場再編をめぐる産地間競争であった.コロナ禍における米価変動は,極端な需要縮小を前に産地段階で新規需要米への振り分けによって米価下落を食い止めようとする涙ぐましい努力の産物であった.そして,「令和のコメ騒動」は,生産調整によって供給を抑制することで米価下落を食い止めようとするものの,過度な数量削減によってわずかな需要増加で価格変動が常態化してしまう市場環境を政策的に作り出したといえる.これらから示唆されるのは,今後も生産調整による生産抑制と産地が生き残りをかけた産地間競争(品種開発,ブランド化乱発,早期売り切り)が続く限り,構造的な問題として米価変動は繰り返されるということである.今後,国民が安価で安定的に美味しい米を消費するための展望としては,コメの使用価値を裏付けにした価値実現(生産性の上昇による価格競争)するための正常なマーケットを構築することである.それは,コシヒカリを基準とした特定品種による硬直的な使用価値評価の市場を見直すこと,生産性の上昇による生産費の低下を享受できるために生産数量を抑制する生産調整の在り方を見直すこと,そのための価格形成機能を担保するコメ市場を再構築する必要がある.</p>
Journal
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- Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers
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Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers 2025s (0), 74-, 2025
The Association of Japanese Geographers
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390303697452865024
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
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- Abstract License Flag
- Disallowed