CDR-J検査(臨床認知症評価尺度-日本版)の標準化について:標準化によって明らかにされたJ-ADNI研究の問題点

書誌事項

タイトル別名
  • Standardization of the Clinical Dementia Rating-Japanese (CDR-J) to clarify problems with the study of the Japanese Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative (J-ADNI)
  • CDR-J ケンサ(リンショウ ニンチショウ ヒョウカ シャクド-ニホンバン)ノ ヒョウジュンカ ニ ツイテ : ヒョウジュンカ ニ ヨッテ アキラカ ニ サレタ J-ADNI ケンキュウ ノ モンダイテン
公開日
2023
DOI
  • 10.11253/ninchishinkeikagaku.25.103
公開者
認知神経科学会

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説明

<p>【要旨】 CDR検査は認知症の本格的検査として本邦で広く使用され、認知症治療薬レカネバブの治療効果判定にも用いられた検査である。しかし、CDR検査で新薬の治療効果などを調べていても、CDRが正しく施行されているのだろうか、また、検査結果が適切に採点されているのだろうか、などの疑問がある。さらに言えば、CDR検査は認知症の検査として、妥当性があり、認知症を測定しているのだろうか? また、信頼性があり、二度検査した場合、同じ結果がえられるのであろうか?という不安が生ずる。これらの疑問や不安に答えるためには、CDR検査の標準化が必要である。標準化とは、1. 検査の指示の仕方が定められている。2. 検査の採点の仕方が定められていて、客観的である。3. 妥当性が高い。4. 信頼性が高い、の4条件を満たす標準(化)検査を作成する過程を言う。CDR-J検査は本研究を開始する前に1と2は作成されていたが、実際に実施したことがなかったので、確認をすることにした。3と4は算出されたことがなかったので算出した。我々はJ-ADNI研究で実際の検査をされた545例から問題例113例を除いた432例を対象とした。</p><p> 1. CDR-J検査の実施に関する指示の確立。実際にCDR-J検査を行ってみると指示に関する4つ誤りが見出だされた。1) エピソード記憶課題で、検査者が「情報の数に関する指示」に従わない。2) エピソード記憶課題で、「検査者が検査結果を、第三者が読めるように書く」という検査の前提を守らない。3) 記憶再生課題である木村三郎課題の実施に関する指示を検査者が守らない。4) 空欄を作らないという指示を検査者が守らない。などによって誤りが生じた。4種の指示を守っていないという誤りのうち1種以上の誤りがあった被験者が432例中297例(68.8%)あった。</p><p> 2. CDR-J検査の採点(評価)基準の固定。全被験者432例のうち、CDR-J検査の指示に誤りのあった297例を除いた135 例について検討した。135例中、69 例(51.1%)にCDR-J検査採点(評価)の誤りがあった。CDR-J検査の6つのカテゴリーのうち、記憶カテゴリーの評価誤りが最も多かった。評価の誤りが多い原因として、検査者が評価に関する指示に従わないこと、採点が難しいこと、及びCDR原版に由来する評価の曖昧さなどが考えられる。指摘された。なお、1と2について、誤りが異常に多い点は、J-ADNI研究の問題点として重視すべきである。</p><p> 3. 妥当性。135例のうち採点の誤りのなかった66例を対象として検討した。包括的CDR得点とSum of Box得点のいずれも、代表的認知症スクリーニング検査であるMMSE-J検査の合計点と強い相関(p<.0001)が認められた。したがって、CDR-J検査は認知症の検査として、基準関連妥当性があるといえる。臨床的妥当性を見るために、包括的CDR得点とSum of Box得点でNL群とMCI、および軽度AD群間のカットオフ値を求めた。包括的CDR得点とSum of Box得点を比較すると、Sum of Box得点の方がMCIとADをほぼ鑑別できるので、包括的CDR得点より正確な診断が可能である。</p> <p> 4. CDR-J 検査の信頼性。CDR-J 検査の 6 つのカテゴリーの信頼性を検討するために、6カテゴリーの内的一貫性を検討した。アルファ係数は高く0.89であった。しかし、項目―全体得点相関を算出してみると。身の回りの世話カテゴリーは0.30と低く。他の5つのカテゴリーは0.76と高かった。したがって、身の回りの世話カテゴリーは 6 カテゴリーの内的一貫性を損ねるカテゴリーであることが明らかになった。</p> <p>標準化によって明らかにされた J- ADNI 研究の問題点</p> <p> 1. CDR-J 検査データベースの訂正が必要である。J-ADNI 研究の代表研究者の岩坪威氏は2016年1月末にJ-ADNIのCDR-J検査の結果を公表している。本研究と杉下、竹内(2023)の研究はこのデータは多くの誤りを含んでいることを明らかにした。したがって、岩坪威氏が 報 告 し た デ ー タ( 日 本 科 学 技 術 振 興 機 構(2016))(http://humandbs.biosciencedbc.jp/hum0043-vl).10)を訂正する必要がある。</p> <p> 2. CDR-J 検査の実施において、検査実施の指示が厳守され、カテゴリー評価が正しくおこなわなければならない。</p> <p> 3. 過去の治療効果研究や臨床研究で CDR-J 検査を実施した研究(たとえば、Iwatsubo T(2018))12)では、検査実施の指示が厳守され、カテゴリー評価が正しく行われたのか検討する必要がある。</p> <p> 4. 治験や研究で心理検査を用いる場合は、標準化された心理検査でなければならない。本研究と杉下、竹内(2023)の研究により、CDR- J検査の実施に関する4種の誤りが多数生じたこと、CDR-J検査の採点(評価)については、カテゴリーの評価誤りが多いことが明らかになった。また、本研究により妥当性と信頼性がかなり高いことが明らかにされた。CDR-J検査は検査実施の指示が厳守され、カテゴリー評価が正しく行われれば、認知症治療薬の効果測定や認知症の症状把握に用いることができるレベルに達したと考えられる。</p>

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