鉱工業地域(特に企業城下町)におけるスポーツと立地調整

書誌事項

タイトル別名
  • Sports and locational adjustment in mining and industrial regions: mainly focusing on company towns
公開日
2026
DOI
  • 10.14866/ajg.2026s.0_151
公開者
公益社団法人 日本地理学会

説明

<p>Ⅰ はじめに</p><p>ヨーロッパや米国、日本の鉱工業地域の多くは、スポーツ(サッカー、野球、アメフトなど)が盛んな地域である。これまでの「スポーツの地理学」では、メガイベント(五輪、W杯)と都市開発やスポーツの地域密着・地域活性化などを論じてきたが、地域の産業とスポーツの関係に関する検討はこれまで十分に行われていない。本発表は、鉱工業地域(特に企業城下町)におけるスポーツの歴史や現状を整理しながら、その方法論的な検討を図る。本発表は、鉱工業地域の分布を理解する手段の1つとして、地理教育にも資するものである。</p><p></p><p>Ⅱ 欧米日の鉱工業地域とプロスポーツ</p><p>イギリスでは、産業革命期にサッカーが確立して鉱工業の発展と結びつき、工廠を意味するアーセナルに代表されるように、各鉱工業都市で名門サッカークラブが発展した。ドイツのルール地域では炭鉱地域の歴史に立脚したクラブ・スタジアム運営が行われたり、オランダのアイントホーフェンやイタリアのトリノでは、企業城下町の中核企業がクラブの設立や運営に関わってきたりしている。米国では、ピッツバーグ・スティーラーズやミルウォーキー・ブルワーズのように地域の主力産業を冠したチーム名がみられる。一方で、日本のプロ野球は、鉄道や新聞社が中心で、鉱工業地域との関係を見出しにくい。</p><p></p><p>Ⅲ 日本の企業城下町と実業団スポーツ</p><p>旭化成の陸上部が著名な宮崎県延岡市では陸上競技大会が毎年開催されていたり、茨城県日立市では日立製作所の工場内で行われていたパンポンが地域に定着していたりするなど、企業城下町では特有のスポーツ文化が醸成されてきた。</p><p>企業城下町で特に盛んなスポーツとして社会人野球が挙げられ、都市対抗野球大会で常連の企業チームが多い。Jリーグ初期に参入したクラブも、大半は実業団サッカー部が母体である。また、女性労働者の多い業種(紡績、金融保険、小売など)では、 バレーボールや陸上長距離(駅伝)の活動がみられた。</p><p>これまで実業団スポーツは、社内の一体感醸成や従業員の士気高揚、人材育成、広告・宣伝効果、従業員の体力強化による生産性向上、体育会系人材の獲得などを目的として、企業側のパターナリズムによってスポーツが奨励されてきた。</p><p>バブル経済崩壊後、事業の「選択と集中」と連動しながら、実業団の休廃部・撤退や特定種目への特化が相次いできたが、近年では、CSV(共有価値の創造)経営の一環として企業ブランドイメージの向上や人手不足時代の人材獲得手段などから実業団スポーツの再評価が進み、実業団スポーツの復調やクラブチームからの揺り戻しもみられる。</p><p></p><p>Ⅳ 立地調整と企業城下町のスポーツ</p><p>経済地理学で論じられてきた立地調整論は、鉱工業地域におけるスポーツの議論においても有効である。立地調整で問題となるのは、雇用削減に大きな影響を及ぼす「閉鎖」「移転」である。従業員が削減されると、実業団スポーツは維持困難となるため、立地調整によるそれへの影響は大きい。</p><p>本発表では、新日鉄釜石ラグビー部のV7(1979~1985年)と、三池工業高校野球部の甲子園優勝(1965年)という2つの事例を通じて、記憶に基づくナラティブから立地調整の地域的影響をみる。これらの事例では、雇用削減期の人々の不安・焦燥感と地域のスポーツチームの優勝の共時性を指摘できる。今後も経済地理学などの知見を活かしながら、研究を進めていく必要があろう。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390307900752903552
  • DOI
    10.14866/ajg.2026s.0_151
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ