薄美濃紙の湿潤強さへの抄紙方法の影響

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  • ハクミノガミ ノ シツジュン ツヨサ エ ノ ショウシ ホウホウ ノ エイキョウ

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抄録

<p>美濃紙は,長年に渡って文化財保存修理の現場において,様々な形で活用されている。特に,文化財を直接支える肌裏紙に,薄美濃紙が頻繁に使用されている。文化財のよりよい保存にはその品質の向上を図ることが重要である。本研究ではその第一段階として,湿潤強さの高い薄美濃紙の製造条件を明かにすることを目的として,抄紙方法を変えた試料を作製し,肌裏紙としての使い勝手にどのような違いが見いだされるのか,また各種の物性データと紙を使用する技術者の感覚との間にどのような相関が認められるのかを検討した。紙の地合は良い方から名人といわれた故古田製,長谷川製,初心者製の順であった。この地合評価と紙試料の灰汁媒染時の湿潤強さの官能評価とはほぼ一致していた。フィンチ法による湿潤強さもほぼ同じ傾向を示した。アルカリ溶液濃度が高くなると,薄美濃紙の湿潤引張強さは低下し,袋洗いや楮の枝先端部からの原料からの試料の湿潤引張強さは低かった。抄紙順と湿潤強さの関係について,抄紙順が遅くなるほど,紙の地合と湿潤引張強さは向上する傾向があった。長繊維が抄紙順の早い段階で抄き出されて,単繊維と柔細胞が多く残るためであると考えられた。</p>

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 73 (6), 559-566, 2019

    紙パルプ技術協会

参考文献 (1)*注記

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