観光産業の拡大による地域への影響

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  • The growth of the tourism industry and regional impact

抄録

<p>本研究では,金沢市におけるゲストハウスなどの簡易宿所が急激に増加した背景ならびに簡易宿所の増加が地域に及ぼす影響について報告する.</p><p></p><p> 金沢市内の宿泊施設数は,2011年から2018年の間にホテルは59件から81件に増加,旅館は49件から58件と微増の中,簡易宿所は13件から175件と7年間で約13.5倍(増加率1246.1%)と急激に増加している.</p><p></p><p> 宿泊施設数が増加している要因として,宿泊客の増加がある.金沢市は,2015年3月の北陸新幹線開通後の2016年には,宿泊客数が308万4854人と300万人を突破した後,2018年時点で330万5090人と宿泊客数を伸ばしている.2016年度においては,宿泊客数の増加17万9650人に占める外国人宿泊客数の割合は78%であり,海外からの観光客の増加に伴い,宿泊需要が拡大している.</p><p></p><p> 簡易宿所が増加している地域には特徴がある.一つめは,観光地への隣接である.金沢市内で簡易宿所が多い地域は,東山18件,野町14件,小将町13件となっているが,東山は,金沢市の屈指の観光地の「ひがし茶屋街」のある地域,野町は「にし茶屋街」に隣接した地域,小将町は「兼六園」に隣接した地域である.二つめは,交通のアクセスである.どの地域も観光地に隣接しているため,交通の利便性が高い.三つめは,空き家や空き店舗など簡易宿所へと転用できる遊休不動産である.東山の簡易宿所は,従前が空き家だったものが多く見られた.このような条件が備わった場所で,簡易宿所の開業が進行したと推察される.</p><p></p><p> また,簡易宿所にもさまざまなタイプがあるが,金沢市東山と野町では,町家をリノベーションした町家ゲストハウスが多く,簡易宿所に占める割合は,東山で66.7%,野町で46.2%であった.</p><p></p><p> このような観光振興が進むとツーリズムジェントリフィケーションが発現する.ツーリズムジェントリフィケーションとは,地域住民が利用していた日常的な店舗が減少する一方で,娯楽や観光に関わる施設や高級店が増加し,富裕層の来住が増えることにより賃料が上昇し,低所得者層の立ち退きを生じさせる現象である(Gotham 2005).金沢市における,ツーリズムジェントリフィケーションの兆候について,既にその兆候が生じている京都市と対比させながら報告する.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564227305928832
  • NII論文ID
    130007710963
  • DOI
    10.14866/ajg.2019a.0_145
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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