植物ホルモン受容体を標的としたサブタイプ選択的PPI誘起リガンドの開発

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Development of subtype selective agonist for phytohormone receptor

抄録

<p>【序論】</p><p>植物ホルモンの1種 ジャスモン酸イソロイシン(JA-Ile, Figure 1)は、植物体内で産生され生長阻害や免疫応答、二次代謝産物の生合成促進などの多彩な生理活性を示す12。JA-Ileは、F-boxタンパク質であるCOI1と、転写抑制因子JAZという2種類のタンパク質間相互作用(Protein-Protein Interaction, PPI)を引き起こし、26Sプロテアソームを介したJAZの分解を誘起することで、各種ジャスモン酸(JA)応答性遺伝子の発現を促す(Figure 1)34。モデル植物シロイヌナズナのゲノム中には、1種類のCOI1と12種類のJAZサブタイプがコードされており、これらの組み合わせが各々異なる生理機能を担うことで、JA-Ileが多様な活性を発現すると推察されている。</p><p> しかし、遺伝的重複性の高いJAZは従来の遺伝学的手法による解析が困難であり、各JAZサブタイプの生物学的役割は未解明である。そこで我々は、12種類のうち特定のJAZサブタイプに選択的に結合してCOI1とのPPIを活性化する有用なケミカルツール、「JAZサブタイプ選択的アゴニスト」の開発を目指し検討を行った。</p><p> まずin vitroにおいて全JAZとCOI1との三者複合体形成能を網羅的に評価する系を新たに構築するとともに、天然物立体異性体の合成とin silico docking studyを駆使して得られたフォーカスドライブラリーを構築した。その結果、植物個体でも有効なJAZサブタイプ選択的アゴニスト候補分子を得たので、ここに報告する。</p><p>【本論】</p><p> JAZサブタイプ選択的アゴニストのリード化合物としてはJA-Ileの構造ミミックである植物毒素コロナチン(Figure 1, natCOR, (+)-1)5-8を選択した。CORの全合成9は既に当研究室で達成しており、その過程で得られる4種類の立体化学ハイブリット異性体(Figure 2)について、既存の評価法での解析を行った。その結果、コロナファシン酸(Figure 2, CFA)部分が鏡像体であるCMA-entCFA(3)がJAZ9以外のJAZサブタイプとCOI1の複合体に対するアゴニストであることが示された(第57回討論会にて報告)。しかし、全JAZサブタイプを網羅するCOI1-JAZ間PPIの検出系は存在せず、3がどのJAZと相互作用するかについては解析できなかった。</p><p> そこで我々は、新たなCOI1-JAZ相互作用の評価系として、JAZのCOI1との結合ドメインであるJAZ断片(degron)ペプチド(約30残基)10を用いたプルダウンアッセイ系を構築し、第57回討論会にて報告した(Figure 3)。アゴニスト添加後にJAZ断片ペプチドに導入したエピトープを介した共免疫沈降を行い、COI1に融合したGSTタグにより検出することによって、アゴニストによる三者複合体形成を評価した(Figure 3)。その結果、(+)-1は全てのJAZサブタイプに結合するのに対し、選択的アゴニスト候補である3は、5種類のサブタイプ選択的に結合することが明らかとなった(Figure 4)。</p><p> 以上の結果から、実際に3がJAZサブタイプ選択的アゴニストのリード化合物であることが実証されたため、これを基にさらなる選択性向上を目指し、検討を続けた。まず構造学的な知見を得るため、唯一報告されているCOI1-(+)-1-JAZ1のX線結晶構造10を基に、結晶構造中</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564227317663232
  • NII論文ID
    130007722901
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.58.0_poster50
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ