日活ロマンポルノに現れた「団地妻」―白川和子と団地妻イメージ―

  • 今井 瞳良
    京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程

書誌事項

タイトル別名
  • “<i>Danchi</i> Wife” in <i>Nikkatsu</i> Roman Porno: Kazuko Shirakawa and the Danchi Wife Image
  • ニッカツ ロマンポルノ ニ アラワレタ 「 ダンチ サイ 」 : シラカワ カズコ ト ダンチ サイ イメージ

この論文をさがす

抄録

<p>本稿は、白川和子が主演した日活ロマンポルノの団地妻シリーズ『団地妻昼下りの情事』( 西村昭五郎監督、1971 年 ) と『団地妻 しのび逢い』(西村昭五郎監督、1972 年)の分析を通して、「団地妻」が「密室に籠る団地妻」からの解放を模索していたことを明らかにする。団地妻は憧れのライフスタイルであるとともに、社会から隔絶され、孤立した「密室に籠る団地妻」としてイメージされてきた。ところが、団地妻イメージとして絶大な影響力を持った白川主演の「団地妻映画」は、「密室に籠る団地妻」からの解放を模索する「団地妻」と、会社に組み込まれた不安定な「団地夫」の夫婦を定型としている。「団地妻映画」は、「密室に籠る団地妻」というイメージにはあてはまらない作品であったのだ。ところが、結婚して本物の団地妻となり引退した白川和子は、「団地妻映画」と「密室に籠る団地妻」という相反するイメージを接続させ、遡行的に団地妻イメージの起源となっていく。白川が「団地妻」を演じた『昼下りの情事』と『しのび逢い』は、「密室に籠る団地妻」からの解放を模索する「団地妻映画」であったにもかかわらず、団地妻イメージの起源として捏造されたのである。</p>

収録刊行物

  • 映像学

    映像学 102 (0), 137-154, 2019-07-25

    日本映像学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ