日本総合健診医学会 第45回大会・パネルディスカッション 健診・人間ドックにおける多職種連携 総合健診における多職種連携としての臨床検査技師の役割と提言

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タイトル別名
  • The Roles and Recommendations of Clinical Laboratory Technologists as Multi-disciplinary Collaborators in Health Evaluation and Promotion

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抄録

1973年に創設された当時の本学会名称はMultiphasic Health Testing and Services(MHTS)と英訳されていた。このことからも明らかなように、総合健診業務はMultiphasic(多相な)サービスの一つであり、生活者の様々な健康レベルを多角的・総合的に捉え、各個人への効果的な健康増進支援を実現するチーム医療の必然性が当初から認識されていた。本学会の樫田良精初代会長が臨床検査の精度管理調査を総合健診の継続的な事業の柱として位置づけられたこともその意図があったためと思われる。時が経過し、45年を経過した今日では人々の生活習慣は益々多様化し、社会構造や働く環境がグローバル化して変化の激しい時代となった。この中において、健康を阻害するリスク要因も多岐にわたり複雑化してきている。これらの多様なリスク増大時代を克服するためには、医師の専門的治療行為だけでは総合健診は遂行できず、医師以外の専門職種も加えた有機的な相互の信頼と協働のシステムが稼働する必要がある。その中で各職種の必要かつ効果的な業務拡大と連携のあり方が模索されている。<br> 総合健診における臨床検査技師の役割と課題について、筆者は、臨床検査データの有効活用をさらに積極的に提示して、健診を利用する側である事業所や地域社会の生活者の健康増進の質(QOL)の向上に寄与し得る行動変容へ結びつける努力が最も重要であると考えている。従来の二次予防型健診から一次予防重視型健診へと総合健診の重点とその役割が移行しつつある現代においては、総合健診の新しいステージを迎え入れるために、「治未病(病気を治すのではなく、未病状態を治すこと)」の概念を意識した臨床検査の活用を図る検討がさらに望まれる。本学会の特色である「総合健診指導士」および「業務管理士」認定制度を活かし、新たなる臨床検査技師の使命とチャレンジをもって、現代予防医学に寄与できる面が多々あると考えられる。臨床検査のプロだからこそできる、検査の特性と精度および意義を踏まえた価値のある検査医学支援を基軸として、新しいバイオマーカーやゲノム情報等のエビデンスを蓄積して、発症前の予測にも寄与し得る検査知識・技能そして人格を有する専門職種の育成を今後に期待したい。

収録刊行物

  • 総合健診

    総合健診 45 (3), 507-513, 2018

    一般社団法人 日本総合健診医学会

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