頸部郭清術―鋭的剥離を中心に―

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  • 第118回日本耳鼻咽喉科学会総会モーニングセミナー 頸部郭清術 : 鋭的剥離を中心に
  • ダイ118カイ ニホン ジビ インコウ カガクカイ ソウカイ モーニングセミナー ケイブカクセイジュツ : エイテキ ハクリ オ チュウシン ニ

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抄録

<p> 頸部郭清術は耳鼻咽喉科・頭頸部郭清術外科医にとって必修の手術手技であるが, 頭頸部癌患者の予後および QOL を左右する重要な手術手技でもある. その術式は時代とともに変遷しながら, 各施設における先達による手技の工夫が加わりさまざまなバリエーションが生じてきたが, 変わらないコンセプトは,「リンパ節とリンパ管を含む脂肪結合織を周囲組織から切離し筋膜などの被膜に包んで摘出する」ということである. そのため, 頸部の筋膜の解剖と郭清組織を六面体に見立てて摘出するイメージは重要である.</p><p></p><p> 昨今では, 進行癌に対しても化学放射線療法が標準治療の一角を占めるようになり, 救済手術として頸部郭清術を行う機会が増えてきた. このような症例では, 強い線維化や瘢痕のため非照射例とは剥離の容易さが全く異なることがある. 非照射例では多くの場合, 鈍的剥離で容易に剥離される層は正しい郭清の面と一致するが, 救済手術では必ずしもそうとは限らない. 瘢痕組織は硬いため, 鈍的な剥離では本来の郭清すべき面と異なる脆弱な部分で裂けやすいことに注意が必要である. そのため, 瘢痕組織の切離を行う場合には, メスで鋭的に行う方が正確かつ容易である. 鋭的剥離の際には, メス刃の角度や動かし方を変えることで, メスの切れ味を調節したり, 想定以上に深く切り込まないようにすることが可能である.</p><p></p><p> 術後の QOL の面からは神経や筋肉などの非リンパ組織はできるだけ温存できることが望ましいが, 機能温存的な手術で再発があっては本末転倒である. 郭清範囲内からは絶対再発させないことを優先して術式を選択し実践することが重要であり, 治癒へのラストチャンスとなる化学放射線療法後の救済手術ではなおさらである. そのため, 瘢痕組織を正しい層で剥離することが容易なメスによる鋭的剥離の手技に習熟しておくことが望ましい.</p>

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