書誌事項
- タイトル別名
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- Electron Correlations and Topological Phases in Iridium Oxides
- トポロジカル相と電子相関 : イリジウム酸化物を中心に
- トポロジカルソウ ト デンシ ソウカン : イリジウム サンカブツ オ チュウシン ニ
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抄録
Kane,Meleらによるトポロジカル絶縁体の予言とその実現をきっかけとして,スピン軌道相互作用の大きな重い元素を含む一連の物質は大きな注目を集めるようになった.トポロジカル絶縁体は半導体のような通常のバンド絶縁体と比較して,バルクの性質は一見同じような絶縁体に見える.しかし不純物などでキャリアが散乱されない金属的な表面を保持し続けたり,表面にスピン流が流れ続けるなどの通常のバンド絶縁体が持たない顕著な特徴を持つことから,この表面金属状態の応用上の可能性も探索されている.トポロジカル絶縁体のようなトポロジカル相は,トポロジカルでない相を断熱的に変形することでは実現することができない.異なる相の区別としては,自発的な対称性の破れの有無,磁気転移や固相液相転移などで隔てられている場合がよく知られているが,トポロジカル相はそれらと異なり,絶対零度でのみ定義できる何らかのトポロジーによって区別される.当初のトポロジカル相の予言は電子間相互作用の効果を無視していたが,その後電子相関効果の絡み合いが生む物理が注目され,遷移金属酸化物や重い電子系などで活発な研究が展開されるようになった.この中でもイリジウム酸化物はスピン軌道相互作用と電子相関がともに拮抗して大きい.パイロクロア構造のイリジウム酸化物R_2Ir_2O_7は,高温常磁性相ではゼロギャップ半導体と呼ばれるトポロジカル絶縁体になりかけた半金属状態にある.低温では電子間相互作用の効果はモット絶縁体を生み出し,希土類元素であるRの異なる化合物の多くで,ある種の反強磁性相が実現している.この磁性相の転移温度近傍では,かつてニュートリノを記述する候補となったワイルフェルミオンとして電子がふるまう.一方,磁気秩序が強くなる低温では,ワイル電子は消滅し,単純な絶縁体に帰着するように一見見える.しかし反強磁性ドメインを隔てる磁壁があると,この磁壁に金属層が保持されるというトポロジカル相としての性質が顔を出す.磁壁や磁区は磁気バブルメモリの舞台として産業応用上の長い歴史を持つ.一方ここで予言された金属的な磁壁は,通常のトポロジカル絶縁体表面などとは違い,磁場などで動かしたり制御でき,新たな機能開拓と応用可能性を示している.またこの2次元金属状態はポリアセチレンのソリトンに生じるギャップ内状態の2次元への拡張とも見なせる.蜂の巣格子構造を持つNa_2IrO_3は,量子計算の候補ともなるトポロジカルな量子スピン液体を基底状態に持ち,厳密解の知られているキタエフ模型が実現できる系として脚光を浴びた.ただ現実の物質では磁気秩序が生じてしまう.第一原理的にこの物質の電子構造を調べることで,この謎となっていた磁気秩序の原因が明らかとなった.現実の物質がキタエフ液体相の近くにあること,またキタエフ液体を実現するための設計指針も明らかとなってきた.このようにイリジウム酸化物は多様な物理概念の探索の舞台となっている.
収録刊行物
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- 日本物理学会誌
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日本物理学会誌 71 (3), 146-155, 2016-03-05
一般社団法人 日本物理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390564237999363456
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- NII論文ID
- 110010040451
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- NII書誌ID
- AN00196952
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- ISSN
- 24238872
- 00290181
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- NDL書誌ID
- 027145372
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可