リラクサーの謎の解明に向けて : 分極,分光測定と電顕観察より(最近の研究から)

書誌事項

タイトル別名
  • Understanding of the Relaxor Behaviors : Comprehensive Investigations from Polarization, Raman Scattering and Transmission Electron Microscopy Observations(Current Topics)
  • リラクサーの謎の解明に向けて--分極,分光測定と電顕観察より
  • リラクサー ノ ナゾ ノ カイメイ ニ ムケテ ブンキョク ブンコウ ソクテイ ト デンケンカンサツ ヨリ

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抄録

リラクサー(relaxor)が示す特異な誘電特性に関しては長年議論されてきたが,その本質的な発現機構は未解明のままである.本研究では,代表的なリラクサー物質であるPb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3(PMN)を対象とし,分極測定,ラマン分光,及び透過型電子顕微鏡観察の実験結果を総合的に解析した結果,以下の結論を得た:(1)PMNにおける広範な温度領域にわたる巨大な誘電応答は分極ドメインの応答に由来する.(2)PMNは本質的にはT_c〜225Kの強誘電体である.(3)強誘電相において,ナノサイズのドメインは互いにマイクロメートルオーダーの範囲で相互作用し,全体としてより大きなドメイン構造を形成する.これらの結果より,リラクサーという複雑系物質の物理像がより明確になった.ここで明らかになった「ドメイン構造の多重スケール不均一性」とも言うべき階層的構造が,今後の巨大応答物質開発に対して新たな方向性を与えることに期待したい.

収録刊行物

  • 日本物理学会誌

    日本物理学会誌 66 (4), 270-276, 2011-04-05

    一般社団法人 日本物理学会

参考文献 (32)*注記

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