エピジェネティック毒性の検出システムに関する開発研究

DOI
  • 曽根 秀子
    国立環境研究所 環境リスク研究センター 横浜薬科大学 健康薬学科

書誌事項

タイトル別名
  • Evaluation of new screening tests for epigenetic toxicities

抄録

<p>生殖・発生や発がんなどの毒性にエピジェネティック制御が強く関与していることが指摘され、化学物質曝露によるエピジェネティック毒性の検出に関心が高まっている。演者は以前より、多能性幹細胞とその分化細胞を主な研究材料に、エピジェネティックな変動を引き起こす物質の迅速検出試験法を開発している。この開発研究では、多能性幹細胞モデルであるマウスESC細胞株とヒトiPS細胞(207B)株に、それぞれ、MBD-GFPとHP1-mCherryのコンストラクトを導入し、DNAメチル化及びヒストンH3K9メチル化修飾を指標としたグローバルなエピジェネティック状態を可視化するモデル細胞を樹立した。心毒性、肝毒性及び神経毒性が報告されている化学物質、135種類について、モデル細胞の核内に顆粒状に存在しているMBDまたはHP1の蛍光強度・面積・数に対する影響を、イメージングサイトメーターを用いて定量的に解析した。その結果、顕著な活性が認められた11種類の化学物質に関して、次世代シーケンサーを用いて幹細胞制御に関与する100遺伝子の網羅的遺伝子発現解析を行った。さらに、DNAメチル化PCR、ChIP-seq等を行い、化学物質曝露によって発現量に変化が確認された遺伝子領域におけるエピジェネティックな変化を調べ、モデル細胞を用いたエピジェネティック毒性の迅速検出試験法の有効性について検証した。さらに、他の環境要因との比較研究では、ヒトのiPS細胞からの網膜神経節細胞への分化誘導試験法を用いて、その初期に低線量放射線の照射と5-アザシチジン曝露による影響を調べた。DNAの二本鎖切断のマーカー分子であるγ-H2AXが増加する低線量被ばく条件下で、それに見合う転写変動が確認され、変化した遺伝子には反応、発達、分化などに関するものが見出された。以上のことは、多能性幹細胞を用いたDNAメチル化およびヒストンメチル化修飾の変動の迅速な検出により、化学物質や環境要因のエピジェネティック毒性を把握し、晩発影響の予測に活用できる可能性を示唆している。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238006762496
  • NII論文ID
    130007432108
  • DOI
    10.14869/toxpt.45.1.0_s9-6
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ