HepG2細胞におけるヒ酸による活性酸素種を介したEPO産生の促進
書誌事項
- タイトル別名
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- Promotion of erythropoietin production in HepG2 cells via reactive oxygen species by arsenate
抄録
<p> 土壌や地下水に存在する砒素による飲料水や農作物の汚染は世界各地で報告されており、深刻な社会問題となっている地域も存在する。環境中には5価のヒ素化合物が多く含まれる一方で、砒素中毒の解析は亜ヒ酸に代表される3価のヒ素化合物で進んでおり、5価のヒ素化合物の影響に関する報告は僅かである。さらに、毒性を発現しない低濃度の砒素が生体に対してどのような影響があるのかは解析が進んでいない。</p><p> 我々は5価のヒ素化合物であるヒ酸がHepG2細胞においてエリスロポエチン(EPO)産生を促進させることを報告した。しかし、促進メカニズムについては不明なままであった。砒素は細胞内で代謝される際に活性酸素種(ROS)産生をすることが明らかになっている。そこでヒ酸によるROS産生がEPO産生に及ぼす影響について解析した。細胞内ROS量は蛍光染色により測定した。mRNA発現量はリアルタイムRT-PCR法で、タンパク量はウエスタンブロッティングで評価した。HepG2細胞への100 µMヒ酸24時間処置において生存率は影響を受けず、毒性は発現していないと考えられる。しかし、100 µMヒ酸によってHepG2細胞の活性酸素種(ROS)産生は増加していた。100 µM ヒ酸処置によってEPO mRNA発現量は増加し、EPO mRNA発現の調節因子 hypoxia inducible facter(HIF)1αタンパク量も増加した。一方HIF1α阻害剤PX478はヒ酸によるEPO mRNA発現量増加を抑制した。また、HIF1α mRNA発現量はヒ酸添加によって変化しなかった。HIF1αタンパク量はROSによって増加することが報告されている。そこで、ヒ酸と同時にROSスカベンジャーのn-acetylcysteine (NAS) を添加するとヒ酸によるROS産生は抑制され、HIF1αタンパク量も増加せず、EPO mRNA発現も増加しなかった。</p><p> これらの結果からヒ酸添加により産生されたROSが、HIF1αタンパク量を増加させ、EPO産生を増加させることが示唆された。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 45.1 (0), P-188-, 2018
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390564238008241792
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- NII論文ID
- 130007432335
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可