複製後のDNAの接着と分配を制御する新規なタンパク質因子

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正常な細胞の増殖には,染色体の複製と均等分配が必要である.これらの制御は,初期発生の過程でも重要であり,この過程での異常は,染色体異常や不妊(発生異常)の原因ともなると考えられている.例としては,まずダウン症候群に代表される,染色体の数が異常となる染色体異数性による疾病が挙げられる.ダウン症候群では21番染色体が細胞あたり3本保持されている.性染色体の異数性による疾病も知られている.他の染色体の異数性は多くが発生途上で致死性となり,不妊の原因となる.また多くのがん細胞は染色体異数性を持っており,これによる遺伝子制御の異常ががん化促進に関与する可能性が検討されている.このような染色体異常の起因を明らかにするには,DNA複製と分配の制御機構を詳細に解明することが重要となる.<br>近年,染色体の複製と分配とをつなぐ分子機構の重要性が明らかになってきた.つまり,染色体の複製の過程の中に,分配機構の初期の過程が含まれている.そして,これらの過程の共役が欠損すると,正常な分配が阻害されてしまうのである.ここでいう分配の初期過程とは,新生DNA領域の接着である.新生DNA領域の接着は,原核生物である大腸菌からヒトを含む真核生物にわたって,広く保存されている共通原則といえる.しかしながら,DNA複製と共役したDNA接着・分配の分子機構については,未踏の領域が広く残されている.本稿においては,まずDNA複製の分子機構を最新成果も交えつつ基礎から説明して,大腸菌で見いだされた新生DNA接着の新たな分子機構を解説したい.

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 51 (2), 099-103, 2015

    公益社団法人 日本薬学会

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