脂質キャリアを用いた血液凝固因子の安定化とインヒビター産生抑制

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抄録

血友病とはX連鎖劣性遺伝形式を示す先天的な出血性疾患である.血友病患者全体の8割以上は,血液凝固第Ⅷ因子(FⅧ)の欠乏が原因とされる血友病A患者である.FⅧは血液凝固内因系に関与するタンパク質であり,トロンビンによる活性化を受け,活性型第Ⅸ因子と複合体を形成する.一連のカスケードの後,最終的にフィブリンを形成し止血する.FⅧ製剤は,血友病A患者の出血時の補充に使われるのみでなく,出血予防を目的とした定期補充療法として幼児期から長期間にわたり投与される.しかし,FⅧの血中半減期は約12時間と短く,血中FⅧ濃度を0.01U/mL以上に維持するためには2~3日おきの投与が必要となる.FⅧ製剤は非常に高額であることから,患者家族の経済的な負担は大きい.加えて,血友病A患者の一部の症例では,FⅧ補充療法開始後の早い段階でインヒビター(抗FⅧ抗体)が産生されるため,FⅧの効果が低下する.したがって,患者に優しいFⅧ補充療法を実現するためには,血中でFⅧを長時間安定に保持し,さらにインヒビター産生を誘導しない製剤の開発が必要である.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Shetty K. A. et al., J. Pharm. Sci., 104, 388-395 (2015).<br>2) Bovenschen N. et al., J. Thromb. Heamost., 4, 1487-1493 (2006).<br>3) Peng A. et al., AAPS J., 12, 473-481 (2010).

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 51 (4), 363-363, 2015

    公益社団法人 日本薬学会

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