大学生におけるお弁当作りに関する実践研究

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タイトル別名
  • A practical study on making BENTO for university students

抄録

【研究の背景および目的】<br> 大学生の食生活は,一人暮らしが増えるだけでなく,講義や部活動,アルバイトなどで不規則な生活になる傾向が強く,自分で食事を作ることはもちろん,誰かにご飯を作ってもらう機会すら減少し,食生活が乱れがちな傾向にある。安く早く食事ができる場での食事も増え,食の重要性や食を作り出す人へのありがたみを感じにくくなってきているのではないかと考えられる。一方,自分や他人にご飯を作ることの一つの手段として「お弁当」がある。お弁当は,献立決定,材料の選択・購入,調理といった,一連の食に関わる工程を通して限られたスペースのお弁当箱に詰めるという,日本特有の食文化である。また,最近では「弁当の日」なども実施され注目されているが,大学生を対象とした,食の実践はもちろん,お弁当作りの実践は少ないのが現状である。<br> そこで本研究では,大学生の食生活における実態を明らかにした上で,本学学生を対象にお弁当作りを継続的に実施する中で,大学生におけるお弁当作りの教育的効果とその意義について明らかにすることを目的とする。<br><br>【方法】<br> お弁当作り実践は,2017(平成29)年8~12月の5か月間で1人3回,上記講義を受講した本学1年生39人と2年生6人の合計45人を対象に行った。調査方法は3回のテーマ(第1回「自分が食べたい!お弁当」,第2回「家計がピンチ!節約お弁当」,第3回「家族に食べさせたい!いつもありがとう弁当」)に沿った献立表を予め提出してもらい,1人ずつ自らの献立に沿って実践し,「安全」「手順」「時間配分」「盛り付け工夫」「味付け」「テーマ」 の6項目を4段階で自己評価を行ってもらった。<br><br>【結果および考察】<br> 食生活および健康に関するアンケート調査からは,栄養バランスや主食・主菜・副菜のバランスを気にして食事をしていると回答した学生が多くいたが,意識と実態との間に大きな差があることが示唆された。また,お弁当に関しては,38.5%の学生が1週間に1回以上お弁当を食べ,その半数が購入したお弁当であることも明らかになった。さらに,お弁当を自分で作る学生はごくわずかであり,食費の節約や自分の好きなおかずを食べられることを理由にしていた。一方,作らない理由としては,学食で食べるからという理由が最も多く,その他に,作る時間がない,作るのが面倒,などの理由が挙げられていた。<br> お弁当作り実践においては,第1回目から第3回目にかけて,自己評価で「よくできた」と評価したものが,「盛り付け工夫」については,37.8%→25.0%→54.5%,「味付け」 については,35.6%→40.9%→52.3%と変化した。さらに,献立構成における主菜についても,44種類→32種類→57種類と変化した。最後に全体を振り返って,テーマに沿った納得のいくお弁当を作れるようになったか質問したところ,「とても思う」「そう思う」を合わせると95.2%となった。具体的な内容を尋ねたところ,「手際が良くなった」「回数をこなすうちにより良くできるようになった」「味付けが良くなった」「○○が上手く作れるようになった」など,お弁当作りや調理自体の技術向上を挙げたる学生が多く,具体的な成長点を自分でも実感していた。さらに,お弁当や食生活に対する意識の変化について質問したところ,「とても思う」「そう思う」を合わせると81.0%となった。具体的な内容を尋ねたところ,「栄養バランスや色どりを考えるようになった」「野菜を摂るようになった」など,食事の内容や自身の健康に対する考え方に関すること,また,「作ることの大変さを感じた」「自分で作った方がおいしいと強く感じた」「出来上がっている料理に対して感謝するようになった」「母親に感謝する気持ちが強くなった」「毎日ご飯が出るのは当たり前じゃないと思うようになった」など,自分で作ることの大変さと同時に良さや,食事そのものや料理を作ってくれている人への感謝の気持ちや気づきも挙げられていたのが特徴的であった。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238021249024
  • NII論文ID
    130007474571
  • DOI
    10.11549/jhee.61.0_68
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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