複合型N-結合型糖鎖の効率的化学合成

書誌事項

タイトル別名
  • The Efficient Synthesis of Complex-Type N-Glycans

説明

<p>1. 序論</p><p> タンパク質への糖鎖の付加は最も重要かつ普遍的な翻訳後修飾の1つであり,生体内のタンパク質のおよそ50%が糖鎖の付加を受けている。中でもアスパラギン残基に結合したN-結合型糖鎖は,糖タンパク質の品質管理や血中での動態制御に関わるほか,タンパク質の機能にも大きな影響を与えており,細胞の発生・分化,ガンの転移・浸潤,免疫応答など様々な生命現象に関与することが知られている。しかし,生体内に存在する糖鎖は様々な構造の不均一な混合物(グライコフォーム)となっており,これは糖鎖の詳細な機能研究を行う上で大きな障壁となってきた。すなわち,それぞれの糖鎖構造にはそれと関連した機能があると考えられるが,複雑な構造の糖鎖を天然より単離・精製するのは困難であり,糖転移酵素のノックアウトなどによる“間接的”な機能研究しか行われてこなかった。我々は,均一な構造の糖鎖を用いた直接的な機能研究によって糖鎖の構造と機能の関連性を明らかにするため,化学合成による糖鎖の供給を目指し,特に複合型N-結合型糖鎖に含まれるコアフコース及びバイセクティンググルコサミン(図1)に着目した。コアフコースは糖鎖の還元末端のグルコサミンにa結合したフコースで,シグナル認識の制御機能及びガン細胞との関連などが報告されている。一方,バイセクティンググルコサミンは糖鎖の分子マンノースC4位にb結合したグルコサミンで,ガンの転移やアルツハイマー病との関連が報告されている。本研究では,これらの構造を持つ糖鎖の効率的な合成のため,分岐部での2度のグリコシル化を鍵とする収束的な合成戦略を用いた(図1)。本発表では,糖鎖フラグメント調製のための効率的グリコシル化,及び構築されたフラグメントのグリコシル化による目的糖鎖の合成について詳細を報告する。</p><p>2. マイクロフロー系を利用した効率的グリコシル化</p><p>本研究における目的化合物であるN-結合型糖鎖には数多くのグリコシド結合が存在しているが,糖の構造や反応点などにより,グリコシル化反応の収率及び立体選択性が問題となる場合がある。我々は,マイクロフロー系を用いた効率的なグリコシル化を開発してきた(スキーム1)。マイクロフロー反応では,通常のフラスコ内での反応と異なり,マイクロミキサー内で基質と試薬を混合して反応を行い,基質と試薬が適切な比率で効率的に混合されるほか,反応時に発生する熱も効果的に除去される。これにより,副反応である糖供与体の分解や,望まない立体異性体の生成を抑制することができる。更に,この混合効率を保ったままスケールアップを行うことも容易である。例えば,C5位にNAc基を持つシアル酸供与体1を用いたa-シアリル化は,フラスコ反応では中程度の立体選択性にとどまっていた(a / b = 77 / 23)が,マイクロフロー反応ではその立体選択性を大きく向上させることができた(a / b = 94 / 6, スキーム1a)1。供与体4を用いたb-マンノシル化は,反応スケールを高めた場合に収率が低下する(73%, 900 mg scale)ことが問題となったが,マイクロフロー系を適用することで</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238026397696
  • NII論文ID
    130007494347
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.57.0_oral45
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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