ダフェニリンの全合成

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  • Total Synthesis of Daphenylline

抄録

<p>1. 背景</p><p> ダフェニリン(1)は、ユズリハ属植物であるDaphniphyllum loungerasemosumの果実より単離されたダフニフィラムアルカロイドの一種である1。このアルカロイド群には、抗HIV</p><p>活性やマウス腫瘍細胞に対する細胞毒性などの生物活性を有するものが知られており2、1に関しても有用な生物活性が期待される。しかし、現在までに十分な生物活性評価はなされておらず、その生物活性は不明である。一方で、1の構造的特徴としては、6つの不斉中心を含む複雑な六環性骨格を有していることが挙げられる。さらに、他のダフニフィラムアルカロイドにはない芳香環を有しており、合成化学的に興味深い化合物である。今回我々は独自の合成戦略に基づき、効率的な合成経路の確立を目的として、1の合成に着手した。</p><p>2. 合成計画</p><p> まず我々は、芳香環を含むDEF環に着目し、本三環性骨格の立体配座について考察を行うこととした。そこで、D環内にAC環構築の足がかりとなる二重結合を有するモデル化合物2を用いて配座解析を行い、最安定配座を求めた。その結果、C5位メチル基はC10位不斉炭素上の水素原子と同一方向に配向していることが示唆された。C10位不斉中心より誘起された三環性構造の立体的特性を利用し、残る不斉中心を構築できるのではないかと考え、逆合成解析を行った。</p><p>  ダフェニリンの有するABC環部位は、合成終盤において3のような環状アゾメチンイリドからの分子内1,3-双極子付加環化反応により一挙に構築することとした。3はアルデヒド4より導くこととし、さらにこのアルデヒドの有するC2位不斉中心は、[3,3]シグマトロピー転位により制御できるものと考え、5へと逆合成した。この2つの反応における面選択性は、先程考察した三環性構造の立体的特性により制御できるものと期待した。続いて、5は三環性化合物6に対して増炭を行うことで容易に合成可能である。まずはラセミ体での全合成を目指し、文献既知の三環性ケトン73より合成を開始することとした。</p><p>3. [3,3]シグマトロピー転位前駆体の合成</p><p> まず、インデン8を出発原料として文献既知法に従い三環性ケトン7へと導いた(Scheme 1)。続いて、位置選択的なC-H酸化反応4によりC1位に炭素ユニット導入の足がかりとなる水酸基を導入した後、ケトンへのメチル基の付加と位置選択的な脱水、続くフェノール性水酸基のトリフラート化によって11とした。つぎに、薗頭カップリングにより炭素ユニットを導入後、三重結合部位をRed-AlRまたは、Lindlar触媒により部分還元することで、EもしくはZ体のアリルアルコール13a,bを合成した。次に、それぞれのアリルアルコールをビニルエーテル化することで14a,bとした。</p><p> </p><p> </p><p>4. C2位不斉中心の構築</p><p> 得られたビニルエーテルに対して、トリイソブチルアルミニウムをルイス酸としたClaisen転位5の検討を行った(Table 1)。はじめにE体の14aを用いたところ、反応は円滑に進行したものの、新たに形成されるC2位不斉中心の立体選択性は、2:1と乏しかった(entry 1)。次に、Z体の14bを用いたとこ</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238027211904
  • NII論文ID
    130007490838
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.57.0_oral3
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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