虚偽検出における判定指標としての刺激予期の可能性

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  • Possibility of stimulus anticipation as critical judgement in detection of deception
  • キョギ ケンシュツ ニ オケル ハンテイ シヒョウ ト シテ ノ シゲキ ヨキ ノ カノウセイ

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抄録

<p>虚偽検出場面における剌激予期と判定資料としての有効性について検討した結果,以下のようなことが明らかにされた.</p><p>1 従来の実務報告や実験報告とほぼ同様に,裁決質問に対する呼吸の抑制が認められたことから,呼吸運動が虚偽検出の指標として有効であると考えられる.</p><p>2 実験的な虚偽検出において心拍数を指標として採用する場合,被験者の動機づけが変動の要因となりうる可能性がある.</p><p>3 虚偽検出場面における裁決質問に対する特異的反応の検出に関して,皮膚電気活動は有効な指標となりうる.</p><p>4 虚偽検出場面において質問系列が反復提示された場合,裁決質問の直前に配置された非裁決質問(条件剌激質問)に対する反応はそれ以外の非裁決質問に対する反応とは異質のものであると考えられる.すなわち,条件剌激質問に対する反応には,裁決質問の到来を予測させるような意味が付与される可能性があり,この条件剌激質問に対する反応を分析することも虚偽検出の有効な手段であると考えられる.</p><p>本実験の結果は,虚偽検出に関する従来の見解をほぼ支持するものであると同時に,明らかに剌激予期の存在を示しており裁決質問直前の非裁決質問に対する反応が虚偽判定において有効な指標となりうる可能性を示唆するものである.しかしながら,実務場面への適用を考える場合,剌激(質問)の数や反復回数を独立変数とした詳細な検討が必要である.また,実験場面における質問内容と実務場面における質問内容は質的に異なるものであり,質問の持つ刺激価をも考慮した研究が必要である.さらに,虚偽検出において生理学的指標を採用する場合,提示される刺激(質問)の長さ,および刺激(質問)提示方法(音声・文字なども)も考慮する必要があると考えられる.一方,刺激の反復提示にともなう剌激予期の問題を検討するにあたっては,提示回数に応じた傾向が見られるか否かを検討する必要があると考えられる.また,裁決質問の内容とそれに先立つ質問(条件刺激質問)との剌激の類似性や有意性についても検討する必要があると考えられる.</p>

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