黒子の環境社会学――地域実践,国家政策,国際条約をつなぐ――

書誌事項

タイトル別名
  • Environmental Sociology to Play an Inconspicuous but Vital Role: Bridging Local Praxes, National Policies, and International Treaties
  • ホクロ ノ カンキョウ シャカイガク : チイキ ジッセン,コッカ セイサク,コクサイ ジョウヤク オ ツナグ

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説明

<p>本稿では,地域実践を国家政策や国際条約につなげる実践的政策研究としての環境社会学にどんなことができるのか検討した。まずは,レベルの異なる4つの政策アリーナのうち人々のローカルな生活の場に足場をおきつつ国家に影響を与える「国家の挟み撃ち戦略」を提案した。次に実践・政策過程への関わり方として,表舞台に立つ組織者やファシリテーターとは異なる「黒子」の役割を提案した。</p><p>これらの基本的なスタンスにのっとって実際にどんな研究ができるのか提示するため,新しい国際的メカニズムであるREDD+を取り上げ,地域の実態をより広いレベルの政策アリーナへつなぐことを試みた。そのため,インドネシア共和国東カリマンタン州西クタイ県にて4つの村を対象とし,土地利用に対する住民の選好を明らかにする調査を実施した。その結果,商業的ゴム・プランテーション,伝統的ゴム園,焼畑農業に対する高い選好,果樹園への中程度の選好,籐園およびアブラヤシ農園への低い選好,が明らかになった。その背景要因を検討した結果,REDD+のような国際メカニズムを導入する際には,収益が期待でき,土地収用などの社会的懸念を引き起こさず,人々の多様な生計ニーズを満たすような制度設計が必要であるとの政策的含意を得た。具体的には,国家が権限をもつ林地では企業による森林事業権のなかに住民による非木材森林産物の採取を取り込むこと,地方自治体が権限をもつ非林地では伝統的ゴム園,籐園,果樹園といった二次林に類似した景観をもつ土地利用を炭素事業と関連づけてインセンティブ供与の仕組みを検討すること,などである。</p><p>このような研究成果をそれぞれのレベルでのアリーナに関わるアクターに提供する「黒子」としての役割は,環境社会学のなかで積極的に位置づけられるべき研究者像である。</p>

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