Diffusion Chamberを用いたラット歯髄培養細胞のDentinogenesisの解析

DOI
  • 上田 尭之
    明海大学歯学部機能保存回復学講座保存治療学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Analysis of Dentinogenesis of Rat Cultured Dental Pulp Cells by Using a Diffusion Chamber

この論文をさがす

抄録

<p> 目的 : Diffusion chamber (DC) は, 細胞の増殖や分化を調べるために有用な方法である. これまでに, 骨髄細胞をDCに挿入する方法で, 骨芽細胞への分化や骨形成を調べるために幅広く応用されてきた. そこで本研究では, dentinogenesisの解析にDCが応用可能であるかを検討することを目的とした.</p><p> 材料と方法 : ラットの切歯歯髄組織から分離してきた歯髄細胞をDC内に挿入して, in vivoin vitroの実験を行った. すなわち歯髄細胞を含んだDCをラットの腹腔内に移植したものと (transplanted DC, T-DC), DCを培養皿で石灰化培地を使用して培養するもの (cultured DC, C-DC) に分けて実験を行った. 実験開始から5週間後に, それぞれのDCに対して組織学的な観察と生化学的な解析を行った. また, これらの結果をラットの切歯から分離した歯髄細胞の初代培養の解析結果と比較した.</p><p> 結果 : 腹腔内に移植したT-DCと培養したC-DCともに, 内部には石灰化物が確認できた. 免疫組織化学的染色によって, これらの石灰化物にはdentin sialo protein (DSP) とbone Gla protein (BGP) が含まれることが示された. T-DCとC-DC内での遺伝子発現を調べると, alkaline phosphatase (ALP), typeⅠ collagen, DSP, BGP, dentin matrix protein 1 (DMP-1) といった象牙質の基質形成に関連する遺伝子の発現を認めた. また, Wntシグナルのカノニカル経路に関連が深いectodinWnt10aの遺伝子発現もT-DCとC-DCの両方に認められた. EctodinWnt10aは, Wntシグナルを通して象牙芽細胞の分化や象牙質の基質形成をコントロールしていることが知られている. DCにみられたこれらの遺伝子発現は歯髄細胞の初代培養細胞にも発現しており, その発現量は同じレベルかもしくはDCのほうが高いレベルにあった.</p><p> 考察 : これらの結果はC-DCとT-DCの両方に象牙質様基質が形成されたことを示しており, DCはdentinogenesisの解析に応用可能であることが示唆された.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ