<b>郡山盆地で掘削されたオールコアの層序(第2報)</b>

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  • Geological stratigraphy of a drilling core in the Koriyama Basin, Northeast Japan

抄録

1.はじめに<br><br>福島県の郡山盆地は台地の卓越する内陸盆地である.主な構成層である中・上部更新統の郡山層は場所により厚さの変化が著しく,基底面は起伏に富むとされるが(鈴木ほか,1967),郡山層及び下位の白河層(下部更新統;鈴木ほか,1977)の地質構造の詳細はよくわかっていない.<br><br>ところで近年,日本では地下浅部(100m程度)の熱を冷暖房や融雪などに用いる地中熱ヒートポンプ(GSHP)システムの導入が増えつつある(環境省,2015).GSHPシステムの性能は,地質条件と地下水流れに規制されるため,平野・盆地単位の地質構造や地下水流動を明らかにし,地中熱利用の潜在能力(ポテンシャル)を評価することが,GSHPシステムの適切な設計にとり重要とされる(内田ほか,2010).産総研では,地中熱ポテンシャル評価研究の一環として郡山盆地の地質構造を明らかにする目的で,深度100mのオールコア(GS-KR2015-1,37°24′4.9″N,140°20′1.6″E,+251.6m)を掘削した(石原ほか,2017).本報告では,層相,テフラ分析及び14C年代・FT年代測定結果と既存コア(KR-11-1,深度100.33m,37°25′43.7″N,140°22′28.6″E,+248.6m;笠原ほか,2017)との対比に基づき,GS-KR2015-1コアの層序と郡山盆地の地質構造について考察する.<br><br>2.コアの解析結果<br><br>層相深度1.5mまで表土,深度1.5-22.6mは主にシルト層,深度7.0-8.0mと21.7-22.6mは砂礫層である.深度22.6-37.5mは1-3cm程度の軽石に富む火砕流堆積物である.深度38.0-41.9mは砂礫層で,深度41.9-49.0mは0.5cm以下の軽石を含む火砕流堆積物である.深度49.0m-100.0mは砂礫層からなる.<br><br>テフラ火砕流堆積物の屈折率と主成分化学組成分析を株式会社古澤地質に依頼した.上位の火砕流堆積物の分析結果は,白河火砕流堆積物群(吉田・高橋,1991)の勝方火砕流堆積物(Sr-Kc-U8; Suzuki et al., 2017)に最も近い特徴を示した.下位の火砕流堆積物は,後述するFT年代から鮮新統の火砕流堆積物と考えられる.<br><br>14C年代14C年代測定は株式会社加速器分析研究所に依頼した.深度2.60~2.66mの有機質シルトと深度5.48mの植物片から,それぞれ39,640 cal yBP,>53,880 yBPの値を得た.<br><br>FT年代FT年代測定は株式会社京都フィッショントラックに依頼した.Sr-Kc-U8は0.71±0.17Ma,下位の火砕流堆積物は3.2±1.3Maの値を得た.<br><br>3.コアの層序,KR-11-1コアとの対比<br><br>GS-KR2015-1コアの各種年代値及びKR-11-1コアとの層相対比に基づくと,深度22.6mまでのシルト層は郡山層上部,深度22.6-49.0mのSr-Kc-U8~礫層は白河層,以深の火砕流堆積物~礫層は鮮新統にそれぞれ対比される.本コアは郡山層下部を欠く.一方,KR-11-1コアは深度46.3-69.6mに郡山層下部,深度69.6-80.4mにSr-Kc-U8が分布する(笠原ほか,2017).両コアのSr-Kc-U8の下面高度の比高は約45mである.明瞭な活断層を伴わない郡山盆地では,テクトニクスの面からこの高度差を説明することは難しい.<br><br>鈴木ほか(1967)は郡山層堆積前の郡山盆地が丘陵状の地形であったと推定しているが,両コアのSr-Kc-U8の高度差は,Sr-Kc-U8が堆積する直前にも丘陵状の地形が存在していた可能性を示唆する.Sr-Kc-U8堆積時に起伏地形が埋積され,その後一部地域では再び侵食が進み郡山層基底面の起伏地形が形成されたのではないか.GS-KR2015-1コア地点は郡山層基底の起伏地形の尾根部,KR-11-1コア地点は谷部にあたり,郡山層下部は谷を埋積するように分布すると考えられる.<br><br>謝辞:本研究は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「再生可能エネルギー熱利用技術開発」の一環で行われたものである.記して謝意を表します.<br><br>文献:石原ほか 2017. 地理学会発表要旨集, 91, 286. 環境省 2015. 地中熱利用にあたってのガイドライン.154p. 笠原ほか2017. 地学雑誌 126,665-684. 鈴木ほか 1967. 福島大教育学部理科報告 17: 49-67. 鈴木ほか 1977. 地質学論集 14: 45-64. Suzuki et al., 2017. Quaternary International, 456, 195-209. 内田ほか 2010. 地熱学会誌 32: 229-239. 吉田・高橋 1991. 地質学雑誌 97: 231-249.

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  • CRID
    1390564238048943488
  • NII論文ID
    130007539941
  • DOI
    10.14866/ajg.2018a.0_56
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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