<b>構造調整下における中国の</b><b>LED</b><b>照明産業の立地動向と</b><b>国際的生産連鎖に関する一考察</b>

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書誌事項

タイトル別名
  • <b>Development of LED lighting industrial in China under c</b><b>ompeting in</b><b> The global </b><b>production network</b>
  • <b>―</b><b>華南からの観察</b><b>―</b>
  • <b>the case study of south China</b>

抄録

中国は重要か。どのぐらい重要か。だれに対して重要か。その答えを経済地理学から求めることが筆者の探索の原点である。<br><br>改革開放期の中国経済の変容は対内的にいえば市場経済メカニズムの段階的持続的浸透、そして対外的にいえば「世界の工場」と「世界の市場」の同時的実現によって特色づけられる。その広がりが新興市場国という新たなブロックの分類概念まで登場させるに至っている。<br><br>社会主義体制樹立後の連続性という尺度からみるならば、前半の毛沢東時代=中央集権的計画経済期の30年を準備段階として,そして1978以降に登場した鄧小平路線の時代=市場経済指向の改革開放期の40年をテックオフの段階として大まかに区分することができる。産業構成の評価基準と人口流動の現状からいえば、中後期工業化はまだ継続中である。<br><br>1978年に始まった改革開放政策は、それまでの「大鍋飯」といわれた統制経済から、競争原理・市場原理を取り入れた活力のある経済活動に転換させようとするものであり、基本的には「個人農化」改革から始まり、郷鎮企業と小城鎮の形成など、基層社会をベースとしたローカルの民生経済を刺激しつつ、国有企業の経営体質の転換を目指すものであった。1980年代を通じて、日本に続くアジアNIESの追跡的経済発展があり、中国経済の開放をいっそう刺激した。深圳の出現と珠江デルタの産業集積に象徴される華南の経済拠点と沿海の経済特区が登場し、グレーター香港ないし華南経済圏の発展態様も注目された。<br><br>1990年代に入ると日米欧への輸出がいっそう拡大し、アジア金融危機にもかかわらず、2001年のWTO加盟を通じて現代世界秩序の圧倒的規定要因としてのグローバリゼーションの受容を求めながら「大国」への脱皮によって存在力を高めていった。また、1997年の香港、99年のマカオの返還により、両地を1国2制度として経済的な一体化を進めるとともに、対立にあった台湾とも経済関係を強めてきた。ASEANに対しては、包括的自この過程で改革の重点は地方から中央の強化に移り、2005年3月の国有資産管理委員会(国資委)の設立に見られるように、国有企業の戦略的再編に重点が置かれた。それまでの「国退民進(国有企業が独占分野から退出し、民営企業の参入を拡大する)」のための制度革新は、国際競争力を付けるという目標の下に、むしろ、製鉄・航空・高速鉄道の合併など企業集中の動きが加速することになり、産業空間の再転換を促して現在に至っている。<br>では、中国の変容がもたらす地域間関係と今後の分業形態をどのように<br>考えるのか。中国発イノベーションはありうるのか。<br><br>かくして、中国の経済分析にあたって,グローバル・レベル,リージョナル・レベル,ナショナル・レベルとローカル・レベルなどの空間的位相の整秩が重要であり,同様に経済構造の変化が惹起する内外の関係性を地理学の解釈に置き換えて同定する作業も欠かせない。<br><br>筆者はこれまで農業開発、郷鎮企業と農村の工業化、自動車に代表される国営企業の改革と産業配置、華人経済ネットワークなどのフィールド調査を中心に経済改革開放期の地域変容の理解を深めようとしてきた。現在も、2つの深堀作業を意図してフィールドを継続中である。1つは地域形成の歴史的連続性と非連続性の問題として清代末期・中華民国期の華南における初期工業化の解明で、もう1つは「世界の工場」が変質したかどうかの検証である。<br>前者はすでに公表したので(許2016)、今回は後者の一部として華南中心のLED照明産業の集積事例の分析を行ない、低炭素社会構築と脱「中進国の罠」の構造改革を背景として主に生産連鎖の視点から中国で進行中の産業高度化の特色と国際分業へのインパクトの概観を報告させて頂く。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238050106624
  • NII論文ID
    130007539905
  • DOI
    10.14866/ajg.2018a.0_80
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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