樹根による表層斜面崩壊防止効果の森林成長に伴う変化

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  • Variation of effect of shallow landslide disaster prevention with forest growth

抄録

IPCCの最新の報告によると,気候変動による気温上昇の影響が顕在化しており,将来深刻化することが懸念されている.また,今世紀末の気温が産業革命頃より2℃程度の上昇に抑えられたとしても,ある程度の被害は避けられないとされている.我が国においては,気象の極端化による短時間豪雨の増加が指摘されており,特に山岳地域の多い岐阜県では,豪雨の増加により土砂災害が多発する可能性があると考えられる.森林域における表層崩壊には,樹木の根が崩壊防止に大きく影響していると考えられている.一般に,樹木根系による表層崩壊防止力は,土の粘着力増分として捉えられ,根一本当たりの引き抜き抵抗力,表土層に分布する樹根量等の現地調査を経て多数の研究者により見積もられている.樹木根系による表層崩壊防止力は,幼齢林では不十分であり,拡大増林が実施される以前では多くの表層崩壊が発生していたが,ほとんどの森林で間伐遅れが生じる程に壮齢化した現在ではほとんど表層崩壊が発生しないとも言われている.本研究では,森林の成長を考慮した,将来の土砂災害発生危険度評価の実施を念頭におき,森林の成長モデルと樹根による崩壊防止力を考慮した斜面安全率の式を用いて,森林の生育段階,間伐等の森林管理が豪雨時の表層崩壊の危険度にどの程度影響しているのかを調査する.<br>森林の成長は,材木の収穫予想に用いられる林分収穫表に基づいて算出する.ミッチャーリッヒ曲線、収量密度効果の逆数式、林分構成因子の関係式、自然枯死線を用いて,森林の育成段階,森林管理状況における胸高直径を算出する.斜面安定解析は,根系による崩壊防止力Δcを考慮した無限長斜面安全率の式を用いて斜面崩壊危険度の評価を行う.Δcの算出には立木密度と胸高直径より水平根による崩壊防止力の式を用いた.斜面の水分状態は豪雨時を想定し,飽和状態を仮定した.<br>一般に植林直後の森林では表層崩壊を抑えることができないが,成長した樹木は風化土壌層の崩壊を抑えることができるといわれている.本研究により,スギ,ヒノキでは壮齢林に達する前に十分な崩壊防止力が得られるということが検証できた.また間伐を行った場合,Δcが減少するが,斜面崩壊に与える影響は少ないと考える.

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  • CRID
    1390564238059242752
  • NII論文ID
    130007554091
  • DOI
    10.11520/jshwr.31.0_232
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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