気候変動が日本の水文循環に及ぼす影響評価と要因分析

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  • Impact assessment and factor analysis of climate change on hydrological cycle in Japan

抄録

本研究では,気候変動リスク情報創生プログラムでデータ提供されている気候モデルである,解像度20kmのMRI-AGCM3.2Sの情報を用い,陸面過程モデルSiBUCに入力し,複数の未来のシナリオについて,気候変化がもたらす陸域水文諸量の変化の不確実性を評価し,その要因について評価した.陸面過程と河川流下過程の要素をもつ分布型水文モデルにより陸域水循環解析を行った.陸面過程にはSiBUCを用い鉛直方向の水収支を求め,河川流下過程Hydro-BEAMにより空間的・時間的変動を追跡した.解析期間は現在気候を1979年~2003年,将来気候を2075年~2099年とし対象領域は日本全域とした.現在気候は1種類,将来気候は4種類用いた.また河川流量解析では3000km2以上の集水面積を持つ18水系および筑後川水系の25年平均月流量を比較した.SiBUCでは灌漑効果を取り扱うことができ,さらに地表面状態を緑地・都市・水体の3つの領域に分類し,各グリッドにそれらの混在を認めるモザイクスキームを採用している.各グリッドにおける潜熱フラックスや顕熱フラックス等の地表面フラックスは,それぞれの領域毎に算出され,その加重平均を求めることで得られる.これにより,土地利用ごとの蒸発散量の値を分析することが出来る.また緑地モデルでは,植生の大きさや密度,灌漑地といった情報から土地利用をさらに19種類に分類しており,より細かく土地利用の割合を調べることが出来る.蒸発散量の変化一致度は概ね日本全国でどのモデルでも増加傾向にあることを示したが,一部は減少傾向にあり,特に中国・四国地方の海岸部に集中していた.蒸発散量の将来変化の違いについては,土地利用や土壌の違いが影響していると思われるが,これだけでは全てを説明できないので土地利用ごとの蒸発散量の変化等より詳しく見ていく必要がある.今後はd4PDFのRCM20kmの将来データについても計算し,アンサンブル数を増やしていくつもりだ.これにより,蒸発散量の将来変化についてもより詳しく評価できると考えている.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238059912832
  • NII論文ID
    130007554008
  • DOI
    10.11520/jshwr.31.0_114
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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