リグヴェーダにおける心臓と讃歌を<i>sóma-</i> に喩えることについて

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  • The Heart and the Identification of the Hymns as the Soma in the R̥gveda
  • The Heart and the Identification of the Hymns as the Soma in the Rgveda

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抄録

<p>R̥Vにおける心臓の主要機能には以下がある:(1)大工仕事としての讃歌形成(2)ソーマの純化としての讃歌形成(3)精神活動の座(4)感情の座(5)損傷されうる生命の核(6)インドイラン時代に遡る定型句Skt. hr̥̥dā́́ mánasāとその変形.このうち本稿では(2)を扱う.</p><p>讃歌形成はソーマ濾過と同一視され,そのプロセスにおいてしばしば両方に同一の表現が用いられる.即ち,共に:(1)三つの濾過機を通して祭場・詩人の心臓で濾過され,(2)神格へと注いで捧げられ,[(3)ソーマの場合,飲んだ神格や詩人の心臓に入り,](4)心臓に作用し,(5)神々を力づけて増大させる.</p><p>ソーマ草を叩き潰した後の茎の滓などの不純物が残っているが故に飲用に適さない粗いソーマ汁は,濾して初めて人間や神格に飲めるようになる.それと同様に詩も,アイデアのままでは夾雑物が混ざっており神格が味わうことができないので,ソーマを濾過器で濾すように心臓(中の濾過器)によってこれを洗練された讃歌という形で詩の言葉に表現して初めて,神格が味わうことが出来るようになる,というアナロジーが含意されている.</p><p>この同一視の背景として,ソーマの肉体に及ぼす作用,および言葉を甘い蜜酒やlibatioに用いる液体等に喩える印欧語の詩的伝統が挙げられる.</p>

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