『尊勝仏頂脩瑜伽法軌儀』「尊勝真言持誦法則品」について

書誌事項

タイトル別名
  • A study of Tsun-sheng-fo-ting-hsiu-yu chʼieh-fa-i-kuei tsun-sheng-chenyen- chi-song-fa-ze-pʼin.
  • 『 ソンショウ ブッチョウシュウユガホウキギ 』 「 ソンショウ シンゴンジショウホウソクヒン 」 ニ ツイテ

この論文をさがす

説明

    『尊勝仏頂脩瑜伽法軌儀』(以後、『尊勝儀軌』『大正蔵』973番)は「三蔵善無畏」や「三蔵善無畏奉詔訳」と記され、善無畏訳として伝わっている。しかし、『大正蔵』における対校本では「三蔵善無畏、弟子喜無畏集」「釈善無畏」とされており、善無畏の撰述として伝わっていた痕跡も見受けられるため、ただちに善無畏訳とも言えない。さらに言えば『開元録』(『大正蔵』2154番)・『貞元録』(『大正蔵』2157番)に記載がないことから善無畏の手によるものということさえ疑わしい。<br>  『一切経音義』には「開元十年壬戌歳、善無畏三蔵訳出、仏頂尊勝瑜伽念誦法両巻(1)。」と記されており、これによれば『尊勝儀軌』は善無畏訳であり、その訳出は開元10年(722年)である。しかし『一切経音義』のこの記述に関して、先行研究ではその問題が指摘されている(2)。また、『尊勝儀軌』は日本において空海(774~835)・最澄(767~822)による将来ではなく、円仁(794~684)・円行(799~852)・恵運(797~869(3))、さらに宗叡(809~884)の将来である(4)。さらに、『八家秘録』と覚禅(1143~1213~?)の『覚禅鈔(5)』を見ると、「喜畏」や「喜無畏」の名が見られる。これは、先述したように「三蔵善無畏、弟子喜無畏集」と、『尊勝儀軌』にも見られる名である。しかし、善無畏の弟子「喜無畏」なる人物の存在は不確かである(6)。<br>  ここまで確認したように、『尊勝儀軌』が誰の手に依る物なのか詳らかにできないのが現状である。確実に言えるのは『尊勝儀軌』が『一切経音義』編纂の807年までには成立していたことである。しかし、訳者・撰者を明らかに出来ないとしても、『尊勝儀軌』がどのような性質を持っているのかを明らかにすることはできよう。<br>  『尊勝儀軌』の巻下の冒頭には「今、金剛頂、大毘盧遮那経並びに釈義十巻、蘇悉地、蘇摩呼、如意輪、七俱胝、瞿醯且怛羅、不空羂索等の経を略して撰集す(7)。」と、記されている。この文は『尊勝儀軌』がこれらの経軌の記事を用いて作製されたことを示している。<br>  本稿では『尊勝儀軌』の中でも「尊勝真言持誦法則品」(以後、「尊勝持誦法則品」)に注目し、その行法全体を考察していく。「尊勝持誦法則品」行法全体の記述が如何なる経軌を基に作成され、展開されていったのかを考察していくことで『尊勝儀軌』の一特質を明らかにしていくことが本稿の目的である。<br>  「尊勝持誦法則品」は、その名称からして『大日経』「持誦法則品」との関係が想定される。「尊勝持誦法則品」には、地・水・火・風・空の五輪三摩地に入るための行法が説かれる(8)。その行法全体を概略すれば、次のように分けることが出来よう。<br> <br> ㈠姐字観<br> ㈡五輪観<br> ㈢普通真言<br> ㈣三昧耶真言・一切仏心三昧耶印<br> ㈤五輪器界観<br> ㈥金剛三昧耶真言及び印<br> ㈦降三世真言<br>

収録刊行物

  • 智山学報

    智山学報 65 (0), 533-552, 2016

    智山勧学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ