私の水治療体系

書誌事項

タイトル別名
  • My Original Hydrotherapeutic System
  • 私の水治療体系 : 水氣道20年の歩み
  • ワタクシ ノ スイチリョウ タイケイ : ミズケドウ 20ネン ノ アユミ
  • —Suikido 20 years of Progress—
  • ―水氣道20年の歩み―

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抄録

<p>[背景]1996年に心療内科を標榜して以来,筆者の院所では自我違和的な生活様式のリスクに晒されている患者が次第に増えてきた.多くの患者の自己評価は低く,さらには自己の存在価値の感覚を喪失している者までみられた.1997年にドイツのバート・ウェーリスホーフェンでのクナイプ療法セミナーに参加して感銘を受けた筆者は,自己訓練を開始し,後に集団的な手法を開発した.それはホリスティックでマインドフルネスな集団水中有酸素運動であり,2000年に水氣道と命名した.[目的]この報告の目的は,ストレスフルな生活習慣をもつ患者に対して水氣道をどのように適応したかということであり,また,そうした患者たちが水氣道によって育成された対人関係性についての主観的経験を記述することを目的とする.[方法]毎回の水氣道の稽古(60ないし90分)では,訓練プールで様々な歩行様式(形)を行う.対番制度(上位および下位の対番)はプールの水,室内の空気や仲間意識によって育まれることによって,次第に基本的な組織構造(段級制)および機能(自助,互助および協働)が整備されていく.[結果]現在の継続参加会員数は75名(男37名,女38名).年齢は平均51.9±16.7歳(18~83歳まで):男性49.1±16.4(25~83歳),女性51.2±17.5(18~80歳);身長は男性平均170.0±7.6cm,女性平均156.4±8.0cm;体重は男性平均70.6±16.8kg,女性平均51.1±9.1kg;BMIは男性平均24.4±5.3kg/m2,女性平均20.7±1.9kg/m2だった.疾患構成は線維筋痛症,広場恐怖を伴うパニック障害が各25%,関節リウマチ,うつ病・抑うつ状態が各16%,その他のストレス誘発性の身体疾患が18%だった.主観的経験のうち最も多く報告を受けたのが,孤独感・孤立感や人生の目的喪失感からの解放で55%だった.長期にわたって続いていた否定的な母子関係が消失したとの報告が15%あった.また水氣道と稽古での水は自分たちが求めてやまない母胎内の暖かさと安全感を連想させるという会員が4%ながら存在した.[結論]水氣道は参加者各人が抱える根深い問題の解決のための多層性の組織体であり,その独創的な対番制度により創造し再構築する人間関係を通して得られる知識や技術の多数かつ多様で協働的な諸資源を活用する.水氣道は集団力動と水自体の運動慣性を利用できるので限定的な身体的・精神的強度のみで足りる.水氣道はまた参加者に対して周囲の環境との関係性を正常化する媒体を提供する.水氣道は人間関係を損ねた患者にとっての一定の治癒過程を促進するのではないかと考えられる.</p>

収録刊行物

  • 全人的医療

    全人的医療 14 (1), 29-41, 2015-12-25

    公益財団法人 国際全人医療研究所

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